※この記事は令和8年7月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
輸出事業をされている方から、「消費税の還付って、確定申告のときに1回しか受けられないんですよね?」と聞かれることがあります。
実は「課税期間の短縮」という制度を使うと、この還付を年に4回、最大12回まで分けて受け取ることができます。
今回は、この制度の仕組みと手続き、注意点について解説します。
※この記事では、年4回還付をベースに説明します。
なお、輸出事業と消費税に関する他の記事も、あわせてご覧ください。


1.課税期間の短縮ってどんな制度?
消費税の課税期間は、原則として個人事業者は1月1日から12月31日まで、法人は事業年度の1年間です。
この1年間の課税期間を、届出書を提出することで「3か月ごと」または「1か月ごと」に区切ることができる制度が「課税期間の特例(短縮)」です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6137.htm
国税庁タックスアンサー No.6137 課税期間。
①制度の概要
2代目(予定)1年に1回の消費税申告が、3か月ごとや1か月ごとになるってことですか?
大変なんじゃないんですかね?
そもそも、何のためにそんなことをするんですか?
はい、そのとおりです。
本来は年1回まとめて計算する消費税の申告・納付(還付)を、区切った期間ごとに行うようになります。
通常の会社は決算期に法人税申告と合わせて年1回、個人事業主なら確定申告期に所得税申告と合わせて行います。
わざわざ、それを3か月に1回申告を行う経営者は普通はいません。
ただし、輸出事業に関しては別です。
輸出事業では売上がすべて消費税0%、これに対して国内仕入が10%(食品なら8%)となります。
そう、消費税申告では還付となり、消費税が戻ってくるのです。
つまり目的は消費税還付のタイミングを早めるためです。
②対象になりやすい事業者



うちのように、海外のお客さんへ輸出免税で販売している事業者だけが関係ある話ですか?
まさに輸出事業者は、この制度の恩恵を受けやすい代表例です。
輸出免税の売上が多いと、仕入れにかかった消費税の還付を受けられるケースが多いため、その還付のタイミングを早める効果が大きくなります。
ほかにも、大きな設備投資をした期がある事業者で消費税還付を早めにもらいたい場合には対象になりやすいです。
イレギュラーですが、本来簡易課税にしたい(原則課税に戻したい)ところを誤って原則課税(簡易課税)で翌期に突入してしまった時に短縮したりもします。
とはいえ、輸出事業者以外ですと、ほとんど消費税の課税期間を短縮している企業は見ません。
デメリットもありますしね(後述します)。
2.消費税還付を年4回のことを詳しく



うちの店舗、今、消費税申告年1回ですが、年4回還付に興味がありますね。
ぜひとも、詳しく教えてください。
そうですね、消費税の複数回還付について、手続きとメリデメを見ていきましょう。
①還付のタイミング



うちは法人なんですが、個人と還付タイミング違いますかね?
決算を4月にしているんですが。
まずは、個人事業主の課税期間と申告タイミングについて確認します。


個人事業の場合に課税期間を短縮(3月に一回の申告)にした場合は、このような感じです。
次に、法人で4月決算を例にとるとこんな感じです。


法人の場合に課税期間を短縮(3月に一回の申告)にした場合は、このような感じです。
法人は決算期を自由に取れます。
課税期間スタートの日から3か月ごとに申告ですね。
なお、↑の申告期限は「納付」となる場合です。
輸出事業者のように消費税還付が前提の場合には、納付でなく還付となるため申告期限は5年となります。



申告期限がうんぬんより、早く還付金を受け取りたいです…。
まぁ、だからこそ3か月にしているんですよね。
セラーとしては、当然の気持ちです。
当事務所も消費税を3か月に区切っている経営者さんの場合、優先的に処理しています。
②手続き(届出書の提出)



なるほど。
当店も輸出しているので、やはり3月ごとの消費税還付を検討します。
届出みたいなものはいるんですか?
はい、課税期間を変更するのは特例なので、事前届出制です。
「消費税課税期間特例選択・変更届出書」という届出書の提出が必要です。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1932_1.htm
国税庁 消費税課税期間特例選択・変更届出書(手続きの案内)。
A.提出先・提出期限
提出先は、納税地を所轄する税務署です。
提出期限は、短縮した課税期間の適用を受けようとする期間の初日の前日までとされています。
この期限を過ぎると、その期からの適用は受けられません。



3月ごとに消費税還付受けたいなら、その期間が始まる前に決断が必要なんですね…。
B.短縮の区分(3か月ごと・1か月ごと)
短縮の区分は「3か月ごと」と「1か月ごと」から選ぶことができます。
還付をより早く受けたい場合は1か月ごとを選ぶこともできますが、その分だけ申告の回数も手間も増えることになります。
ここらへん、消費税の申告回数を何回にするかは、経営者さんしだいですが、税理士目線で一度記事を書いてみたいと思っています。
③メリット・デメリットと注意点
A.メリット



資金繰りの面では、かなり助かりそうな制度ですね。
そのとおりです。
輸出事業者にとっては、還付金を早く入ることで資金繰りが楽になるという、大きなメリットがあります。
とくに、当事務所でも多いeBay・catawikiセラー、というか物販全体ですが資金力がものをいう場面が多いです。
消費税のキャッシュフローが1年でなく3か月でまわることで、その間の仕入余力がかなり違ってきますね。
資金が少ないと、高額なアイテムの仕入れに迷う場面が出ますが、とりあえず手元に資金が多いと決断できることも多いです。
融資を受ける際にも手元資金の多さは、金融機関の印象が良いですし、消費税3か月に一度の申告にしてキャッシュを厚めにしていると伝えることもプラスに働く可能性が高いです。
B.デメリット・注意点



良いことばかりのようにも聞こえますが、注意しておくことはありますか?
はい、いくつか注意点があります。
- 申告・納付の回数が増えるため、経理や申告書作成の事務負担が大きくなる
- 一度この特例を選択すると、最低2年間は継続しなければならない
- 1年間の課税期間に戻したい場合は、あらためて不適用の届出書を提出する必要がある
とくに、「申告・納付の回数が増えるため、経理や申告書作成の事務負担が大きくなる」ですが、端的に言うと「税理士報酬が増えます」(苦笑)。
税理士の私が言うのも何ですが、申告が3回に増えることで、ダイレクトに税務報酬に跳ね返ります。
このあたり、事前によく税理士さんと相談されてください。
還付を早く受けられるメリットと、報酬増、2年継続というデメリットを比べたうえで、利用するかどうかを検討することが大切です。
3.まとめ
- 課税期間を「3か月ごと」または「1か月ごと」に区切る「課税期間の短縮」という特例制度があること
- 特例を適用することで、消費税の還付を受けるタイミングが年4回に増える
- 利用するには事前の届出書提出が必要で、選択後は最低2年間の継続適用義務があること



なるほど~。
消費税って面白いですねぇ。
還付になることもそうですし、年に何回も申告できるなんて。
消費税は、独特ですね。
所得税、法人税とは根本的に考え方が違う面があって、実務では要注意ですし、同時におもしろさというか、戦略性もあります。
課税期間の短縮は、輸出事業者にとって、消費税の還付を早く受け取れる有効な制度です。
その一方で、報酬の増加や2年間の継続義務といった注意点もあるため、この機会に検討してみてください。
個別の状況に応じた影響の確認、とくにキャッシュフローが早く回る必要性はあるのか、という点については当事務所でもお手伝いできますので、お気軽にご相談ください。







