※この記事は令和8年8月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
今回は、アパートやマンションを賃貸し始めた方で、さあ今年は青色申告するぞ、という方。
頑張る気持ちはあるものの「青色申告って簿記とか必要なんだっけ?会計ソフトないとダメ??」と意気消沈する方が一定数いらっしゃいます。
そのような、不動産賃貸の青色申告で10万円の特別控除を受ける方法を記載していきます。
読めば分かりますが、複式簿記の知識も会計ソフトも必要ありません。
なお、不動産経営に関する他の記事も、あわせてご覧ください。


1.簡易帳簿でも10万円の青色申告特別控除が受けられます
スタッフさん先生、私、戸建てを1棟買って賃貸始めたって言いましたよね?
青色申告の10万円控除受けたいんですけど、複式簿記?なんかそういう難しいやつ?じゃないと無理ですよね?
いいえ、そんなことはありません。
戸建てなら4棟、アパート・マンションなら9室程度の規模であれば、複式簿記や貸借対照表はなし、簡易な帳簿(簡易帳簿)だけで10万円の青色申告特別控除を受けることができます。
55万円や65万円の控除には正規の簿記(複式簿記)と貸借対照表の添付が必要ですが、10万円控除はハードルがぐっと下がります。
①10万円控除の対象となる方



「4棟まで」というのは、どういう基準で決まっているんですか。
不動産の貸付けが「事業的規模」といえるかどうかで、控除額の上限が変わってきます。
実務上の目安として、貸家なら5棟以上、アパート・マンションなど独立した部屋を貸す形態なら10室以上であれば、事業的規模として扱われます(いわゆる5棟10室基準)。
逆にいうと、4棟以下・9室以下であれば事業的規模には当たらない可能性が高いです。
55万円・65万円控除の対象にはなりませんが、その代わり10万円控除については、複式簿記でなくても受けられるということです。
5棟10室以上の物件をお持ちの方でも、複式簿記に挑戦して55万円控除を狙うのももちろん良いのですが、記帳に時間をかけられない方であれば、まずは簡易帳簿で10万円控除を確実に取る、という選択肢も十分にありです。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
国税庁タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除。
②簡易帳簿とは、単式簿記でつける帳簿のこと



簡易帳簿というのは、具体的にどういう帳簿のことをいうんですか。
簡易帳簿とは、家計簿のように「いつ・誰から(誰に)・いくら」を項目ごとに記録していく単式簿記の帳簿のことです。
簡単に言えば、家計簿と似たようなものです。
複式簿記のように借方・貸方に分けて仕訳をする必要はなく、収入と経費をそれぞれの項目に振り分けて、日付・相手方・金額を記載していくだけで足ります。
また、10万円控除の場合は貸借対照表の添付も不要で、青色申告決算書のうち損益計算書部分を作成して提出すればOKです。
複式簿記の知識がなくても始められる、というのが簡易帳簿の一番のメリットですね。
③実際につける帳簿は4種類



では実際に、何という帳簿をいくつ用意すればいいんでしょうか。
標準的な簡易帳簿として、次の4種類がスタンダードです。
| 帳簿名 | 記載する内容 |
|---|---|
| 現金出納帳 | 現金の出し入れを、取引順に記載する帳簿 |
| 収入帳 | 物件ごとに、賃貸料・礼金・敷金・更新料などを記載する帳簿 |
| 経費帳 | 租税公課・修繕費・地代家賃・給料賃金などを、科目ごとに記載する帳簿 |
| 固定資産台帳 | 建物や設備など減価償却資産の取得・償却の状況を記載する帳簿 |
会計ソフトを使えば、通帳や請求書を見ながら入力するだけで、これらの帳簿は自動的に作成されます。
手書きで挑戦する場合も、月末に1か月分をまとめて記載する形で十分ですので、まずは始めてみることが大切です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/kichou07.pdf
国税庁 帳簿の記帳のしかた-不動産所得者用-(記帳の案内)。
④実際に帳簿を付けてみた



先生、何かサンプルというか、こうやっているみたいなのないですか?
何かないと難しいです!
そうですよねー。
現金出納帳だの収入帳だの言われても???ですよね。
A.まずはゴールを確認
まずは、最終的に作ることになる青色決算書を見ましょう。
ゴールがどんなものか知るのは大事です。









へぇー、個人の不動産賃貸の方の決算書って、こんななんですね。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/039.pdf
国税庁 令和7年分 青色申告決算書(不動産所得用)の書き方
こんな感じです。
難しそうに見えますが、実際には、「誰に貸して」「年間の収入がいくらあったか」「各経費(租税公課、消耗品など)の合計はいくらか」「減価償却関係」この程度です。
分解して、少しずつあたればさほど難しくありません。
B.実際に、決算書に合うように帳簿を作成してみる
ハル税理士事務所の代表税理士の佐々木が実験台?として、令和8年7月から個人での不動産賃貸業を初めてみました。
次のようなスプレッドシートに帳簿をまとめましたので、参考で。






上の横長の表は見にくいので、拡大してみてください。
上のイニシャル、ランニングは私自身が物件の投資利益率を分かりやすくするために入れているので、実際にはもう少し簡略化も可能です。
これは、Gスプレッドシートで作成していますが、もちろん紙で似たように作成してもOKです。
ちなみに、当事務所のお客様で85歳のアパート4つ持っているおばあちゃんいますが、ノートに書いてらっしゃいます。
減価償却だけは自信がないとのことで当事務所に依頼ですが、それ以外は立派にキレイに記帳されてます。



へぇー、すごいおばあちゃんですねぇ。



横長の方が収入や借主の情報ですね。
日付が入っている方が経費帳ですかね。
でも現金出納帳や減価償却は?
おっしゃる通り、上の横長が収入や借主の情報、つまり収入帳。
日付が入っている方が経費帳です。
また、私は現金をほぼ使いません。
もちろん、ゼロではありませんが経費で少し使う程度。
収入は家賃保証会社からの振り込みです。
このように、現金取引がほとんどない場合は、現金出納帳は不要です。
減価償却は必要ですが、これは少し難しいので、別で。
2.まとめ
今回は、1棟〜4棟ほどの規模で不動産経営をされている方向けに、簡易帳簿による10万円の青色申告特別控除についてお話ししました。
事業的規模(5棟10室基準)に満たない方でも、複式簿記や貸借対照表がなくても、上のように簡易に帳簿を整えるだけで10万円控除を受けることができます。
まずは白色申告から一歩進めて、簡易帳簿での青色申告にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。



これなら私もできそうです。
もし記帳のしかたで迷ったら、いつでもご相談くださいね。





