※この記事は令和8年8月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
今回は、これから不動産経営を個人で始める方向けに、開業時に税務署へ提出しておきたい3つの届出をまとめます。
「開業届」「青色申告承認申請」「振替納税」について、提出期限や提出先を中心に解説していきます。
なお、不動産経営に関する他の記事も、あわせてご覧ください。


1.開業時に提出すべき3つの届出
古物商の店主さん先生、前回の続きで、開業時に提出する「開業届」「青色申告承認申請」について、書き方を教えてください。
前回は、EtaxでのID取得がメインでしたね。
今回は「開業届」「青色申告承認申請」、ついで出しておくと便利な「振替納税」について説明します。
- 開業届
- 青色申告承認申請
- 振替納税
それぞれ、提出期限が異なりますので、順番に見ていきましょう。
①開業届
※開業届は、2026年8月現在、Etax(Web版)に対応していません。
Etax(インストール版)だと可能なのですが、処理が多いため今回は紙提出で説明します。
青色申告承認申請はEtax(Web版)で作成申告が可能ですが、開業届を紙で出すなら同時に青色申告承認申請も紙で出す方がラクです。
開業届の提出について



まず、開業届はいつまでに出せばいいんですか?
個人事業の開業・廃業等届出書、いわゆる開業届は、事業を開始した日から1か月以内に提出することとされています。
戸建て賃貸であれば、入居者の募集を始めた日や、実際に賃貸借契約を結んだ日を事業開始日とするのが一般的です。



提出先や提出方法は、どうすればいいですか?
納税地、通常はお住まいの住所地を所轄する税務署に提出します。
私なら、新潟市江南区に住んでいるので、新潟税務署ですね。
窓口への持参のほか、郵送でも提出できます。
青色申告承認申請書とあわせて、同じタイミングで提出すると手間が少なくて済みますよ。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続(手続きの案内)。



ちなみに、開業日ってどうやって決めればいいんですか?
個人事業の開業日は、実はけっこう振れ幅が大きい、グレーな考え方です。
「物件を購入する」「登記が完了する」「賃貸のための広告を出す」「賃借人が入って、初めて賃料が入る」など、いろいろなタイミングが考えられます。
どれが正しいということもありませんが、自分でもう始めると決めた日に開業届を出しても問題ありません。
ただし、遅れすぎると不自然になりますので、収入が発生したら速やかに提出しましょう。
開業届の書き方


これが、開業届です。
なお、最近になってちょっと書式が変わりました。



何か、F01とか記号が付いてますね。
税務署側の電子化が進んで、それに合わせて書式を変えたのかも。
以前は「開業」「廃業」とかに〇を書く形式でしたが、今回は「1」を付ける方式に変わっています。
ただ、記載内容としては以前と変わりません。
上が現在の開業届の様式です。
書くのが少し悩みそうなポイントだけ説明します。
屋号:これは、好きに付けてOKです。
開業時に屋号を考えていなければ、無記載にして、後で自由に付けてOKです(屋号については届出も不要です)。
ちなみに、当事務所のハル税理士事務所も屋号です。
所得の種類:不動産賃貸なら「不動産所得」にチェック。
不動産以外の個人事業(大工、デザイナー、美容師など)の場合は「事業(農業)所得」にチェック。
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無:
「青色申告承認申請書」又は「青色申告の取りやめ届出書」の「有」にチェック。
事業の概要:不動産賃貸ならそのまま「不動産賃貸業」でOK。
従業員を雇用していなければ、これより下は書かなくてもOKです。
②青色申告承認申請
※青色申告承認申請はEtax(Web版)で作成申告が可能ですが、開業届を紙で出す前提のため、青色申告承認申請も紙バージョンで説明します。
青色申告承認申請の概要



青色申告は、出しておいた方がいいんですか?
はい、ぜひ出しておきたい届出です。
青色申告を選ぶと、最大75万円の青色申告特別控除が受けられたり、赤字を3年間繰り越せたりと、税金面でのメリットが大きいです。
(令和8年度分から少し厳しくなって、2年前の収入が1,000万円超の人については、簡易帳簿ですと青色申告特別控除10万円の適用がなくなってしまいました…)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0026007-003_02.pdf
国税庁 【令和 9 年分確定申告から適⽤】
※10万円控除については、(注2)に記載あり。
不動産事業を開始したばかりの人の場合、戸建て賃貸1、2棟だけの規模だと控除額は10万円ですが、それでも白色申告に比べれば有利になることがほとんどです。



提出期限は、開業届と同じですか?
開業届とは期限が少し異なります。
新たに事業を始めた場合は、事業開始日から2か月以内に提出すればOKです。
すでに事業をしていて、翌年分から青色申告に切り替えたい場合は、適用を受けたい年の3月15日までの提出が必要になります。
開業届を出すタイミングで一緒に提出してしまうのが、一番忘れにくいと思います。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
国税庁 A1-8 所得税の青色申告承認申請手続(手続きの案内)。
青色申告承認申請の書き方


これが、青色申告承認申請書です。
こちらも、最近になってちょっと書式が変わりました。



やっぱり、F01とか付いてますね。
デジタル処理するために変えたっぽいですね。
青色申告承認申請書も書くのに迷うところを説明します。
納税地の区分:自宅とお店に分かれている人などは、迷うかも。
基本的に、自宅の住所を書けばOKです。
屋号:開業届と合わせて書けばOK。
納税地以外の住所地等:お店、工場を自宅とは別に持っている場合は記載します。
〇年分以後の所得税の申告は…:ここ大事。開業届と同時に出すなら、その年を記載。
1.事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地
不動産賃貸業なら、1棟目の物件を書きます。
名称:新潟市江南区物件 所在地:新潟市江南区稲葉〇〇 みたいな感じでOK。
3.青色承認の取消、5.相続による事業承継は、普通は書かなくてOK。
4.本年1月16日以後新たに業務を開始した場合、その開始した年月日
開業届に記載した開業日を書けばOK。
6.その他参考事項
(1) 簿記方式 ➡ 1棟、2棟しか持たない不動産オーナーなら、「簡易簿記」でOK。
(簡易簿記に〇付けたけど、実際は複式簿記でやるも問題なし)
(2) 備付帳簿名 ➡ 不動産オーナーの場合、「総勘定元帳」「固定資産台帳」だけに〇でOK。
これ以降は書かなくてOKです。
③振替納税の利用



開業届と青色申告はわかりました。
ほかにも、やっておいた方がいいことはありますか?
はい、忘れないうちに「振替納税」の手続きもしておくとよいです。


振替納税の依頼書です。
こちらは、水道料などの口座振替の依頼書とさほど内容は変わりません。
一式、記載して所轄の税務署に郵送です。
ネットに慣れている方で、ネットバンキングを利用されている方ははEtaxで行った方が簡単かも。
ネットバンキングに対応していない金融機関でも可能ですが、対応している金融機関かは次のページで分かります。
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/furikae_kinyu.htm
国税庁 オンライン提出利用可能金融機関一覧(振替納税)
個人の方の場合、法人と違って振替納税という手法が使えます。
確定申告をして所得税、消費税を納税するときに、税務署側が指定口座から自動引落してくれる制度です。
納め忘れがなくなりますし、当事務所の個人のお客様も、9割以上の方が振替納税を利用されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9201.htm
国税庁 振替納税のご案内(手続きの案内)。
また、振替納税の場合、口座振替までのタイムスパンが長いというメリットもあります。
所得税を例にとると、次のようになります。
- 紙またはダイレクト納付 ➡ 3月15日まで
- 振替納税 ➡ 4月23日



へぇー、1か月も支払時期を遅らせられるんですね!
3月お金ないから、助かります。
なら振替納税にしたいんですが、口座はいつまでに登録すればいいんですか?
特に厳密な期限はありませんが、だいたい紙提出の場合は登録までに1月かかります。
確定申告の時期に間に合うよう、早めに口座振替依頼書を提出しておくと安心です。
書面のほか、e-Taxからオンラインで提出することもできます。
開業届、青色申告承認申請と合わせて紙で送ってもOKですし、振替納税だけはEtaxから行ってもOKです。
(なお、屋号付きの口座の場合、EtaxからWeb上で処理できません。紙ならOK)
一度手続きをしておけば、口座変更や取りやめの依頼をしない限り、翌年以降も自動的に継続されます。
2.まとめ



開業届、青色申告承認申請、振替納税の3つですね。
まとめて手続きするように兄に言っておきます。
はい、この3つは、できればまとめて提出してしまうのがおすすめです。
提出期限や提出先を確認しながら、順番に進めてみてください。
手続きで迷ったときや、届出のタイミングで不安な点があれば、お気軽にご相談くださいね。








