※この記事は令和8年7月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
今回は、他人に貸している土地の相続税・贈与税評価が下がる仕組みについて解説します。
なお、過去の相続・贈与の記事はこちら。


1.貸している土地(貸宅地)の評価はなぜ下がるのか
2代目(予定)先生、うちの実家の土地、他人に貸して地代をもらっているんですが、相続税の評価が安くなるって聞いたことがあります。
本当でしょうか?
本当です。
亡くなった方や贈与をした方が所有していた土地を、他人に貸して地代を得ていた場合、その土地は「貸宅地(かしたくち)」として評価します。
この貸宅地は、自分で使っている土地(自用地)よりも評価額が低くなるんです。



え、そうなんですか!?
ただ人に貸しているだけなのに、どうして評価が下がるんですか?
借りている人(借地人)が、その土地を使う権利を持っているからです。
逆に言うと、その土地の所有者であっても自分の意思だけで自由に土地を使ったり、借地人を追い出したりすることはできません。
この「利用の制約」を評価額に反映させるため、貸宅地は自用地よりも安く評価される仕組みになっています。
2.貸宅地の評価額の計算方法



なるほど~。
人に貸していると自分で使えないから安くなるんですか。
でも、どのくらい安くなるんですか?
貸付地の評価減、という言い方をしますが、相続税の計算でけっこう重要な要素となります。
せっかくなので、計算式を見て、自分の貸している土地がどのくらい相続税の評価が下がるのか算定してみましょう。
①基本の計算式



ぜひ、計算の仕方を教えてください。
まず、相続税の貸付地の評価を知るために、2つの言葉を覚えましょう。
A. 「自用地評価額」とは
「自用地評価額」とは、その土地に借地権などの権利が設定されていない、まっさらな状態と仮定した場合の評価額です。
つまり、普通に自分で使っている土地(自宅や自分の農地など)のことです。
路線価方式や倍率方式で算出します。
※「路線価方式」、「倍率方式」はまた別記事で説明します。
B. 借地権割合とは
「借地権割合」とは、その土地の評価額のうち借地人の権利に相当する割合のことで、国税庁が公表する路線価図に地域ごとに定められています(30%〜90%の範囲で表示されます)。


赤字の部分が借地権割合。
https://www.rosenka.nta.go.jp/
国税庁ー路線価図



路線価って、無料で見れるんですね。
路線価は無料で公開されています。
毎年7月1日に最新版に更新されます。
そして、貸宅地の評価額は、次の計算式で求めます。
貸宅地の評価額 = 自用地評価額 − 自用地評価額 × 借地権割合
※「自用地評価額 ×(1−借地権割合)」でも同じ結果。
国税庁タックスアンサー「No.4613 貸宅地の評価」
②契約形態によって計算方法が変わる



契約の仕方によって、計算が変わったりするんですか?
はい、権利金や地代の有無によって計算方法が変わります。
A. 権利金をもらっている場合
借地契約の際に権利金を受け取っているような、通常の借地権が設定されている場合は、上記の基本式をそのまま使います。
※権利金とは、土地建物の賃借権を設定したときに、賃借人がオーナーに支払う金銭をいいます。
賃借料の一括前払いのようなもので、地価の7割程度などそのエリアの慣例などを参考にして支払います。
B. 権利金なし・相当の地代をもらっている場合
権利金を受け取らず、その代わりに相当の地代を受け取っている場合は、借地権割合を20%とみなして計算します。
つまり評価額は自用地評価額の80%相当額になります。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm
国税庁 法令解釈通達 「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」借地権割合を20%とするのは、(相当の地代を収受している場合の貸宅地の評価)の部分。
C. 無償で貸している場合(使用貸借)



じゃあ、家族に無償で貸してあげている場合はどうなるんですか?
親族などに地代を取らずに無償で土地を貸している「使用貸借」の場合は、税務上、借地権はないもの(借地権割合0%)として扱われます。
そのため、貸宅地としての評価減はなく、自用地評価額と同額になります。



え、無償だと貸していても安くならないんですか…!
そうなんです。
「安く貸しているから評価も安くなる」わけではなく、「借主にどれだけの権利があるか」で評価が決まる、というイメージを持っていただくと分かりやすいと思います。
無償で貸している場合は「使用貸借」という契約になり、有償で行う「賃貸借」よりも借主の権利は弱くなります。
また、使用貸借は家族間で多く、契約書もない場合がほとんどであるため、客観的に見て賃貸借のように貸主の権利が制限されているとは捉えられないことも要因です。
③具体的な計算例



実際の数字で見てみたいです。
自用地評価額が1億円、借地権割合が70%の土地を、権利金を受け取って貸しているケース(上のAケース)で計算してみます。
1億円 −(1億円 × 70%)= 3,000万円
自用地のまま評価すると1億円ですが、貸宅地として評価すると3,000万円まで下がります。
差額の7,000万円分、相続税・贈与税の課税対象となる財産評価額が圧縮されることになります。



7,000万円も違うんですか!
思っていたより差が大きいんですね。
④貸家建付地との違いに注意



土地の上に自分でアパートを建てて、それを人に貸している場合も同じ計算ですか?
それは「貸宅地」ではなく「貸家建付地(かしやたてつけち)」といって、計算式が変わります。
貸宅地は「土地だけ」を他人に貸している場合、貸家建付地は「土地の上に自分が建てた建物ごと」貸している場合、という違いがあります。
貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 ×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
国税庁 タックスアンサー No.4614 貸家建付地の評価
借家権割合は全国一律30%と定められています。
貸宅地とは計算式が異なるため、混同しないよう注意が必要です。
賃貸割合は、アパートでいう「1-空室率」です。
正確には㎡数で按分しますが、すべての部屋が似たような広さの部屋なら、空室の割合そのままはめても問題ないです。
空室が多いほど、相続税の計算上は不利(評価額が高く)になります。
貸家建付地はアパート経営をされる方にとっては重要な相続税計算のファクターです。
別記事でまた書きますね。
3.まとめ



貸し方によって、評価がこんなに変わるんですね。
勉強になりました!
他人に貸している土地は、借主の権利が評価額に反映されるため、自用地よりも相続税評価額が下がります。
ただし、権利金の有無や地代の水準、無償かどうかといった契約の実態によって計算方法が変わります。
親族間での無償の貸し借り(使用貸借)の場合は評価減の対象にならない点に注意が必要です。
実際の相続税・贈与税の申告にあたっては、借地契約の内容を確認したうえで正しい評価方法を選ぶことが大切です。
ご不明な点があれば、当事務所までお気軽にご相談ください。










