※この記事は令和8年8月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
今回は、賃貸経営を始めた方からよくいただく「賃貸建物の取得費には何を入れればいいですか」というご質問について、事業用(個人事業主・法人)と自宅(プライベート利用で売却時)の違いも交えてお話しします。
なお、不動産経営に関する他の記事も、あわせてご覧ください。


1.事業用と自宅用(売却時)で、取得費の考え方はこう違う
スタッフさん先生、将来リッチになるために賃貸用の物件を購入しました。
仲介手数料や登記費用など、いろいろお金がかかったんですが、これって経費ですよね??
なるほど、不動産賃貸経営を始めたばかりの方からよくいただくご質問ですね。
実は取得費の考え方は、法人または個人事業として不動産を持つ場合と、もともと自宅として使っていた不動産を売る場合とで、ルールが少し異なります。
今日はその違いを整理してお話ししていきますね。
①事業用(個人事業主・法人)の場合



事業として賃貸経営をする場合、取得費には具体的に何が入るんですか。
買うときにかかったお金は、全部含めていいんでしょうか。
個人事業主でも法人でも、事業用として不動産を取得した場合は「取得費」というより、支出した費用を「資産として計上するもの」と「損金・必要経費として計上できるもの」に分けて考えます。
資産として計上したものは減価償却を通じて少しずつ費用化されますが、損金・必要経費として計上できるものは、支出した年(事業年度)に全額を費用にできます。
資産として計上するもの・損金や必要経費として処理できるものを整理すると、次の表のとおりです。
| 資産として計上するもの | 損金・必要経費として処理できるもの |
|---|---|
| 購入代金・建築代金 仲介手数料 固定資産税・都市計画税の未経過精算金 購入後稼働前のリフォーム費用 稼働後のリフォーム費用(資本的支出となるもの) | 不動産取得税 登録免許税・登記費用 建設計画の変更により不要となった調査・測量・設計・基礎工事等の費用 契約解除に伴う違約金 取得のための借入金利子(使用開始前の期間分) 稼働後のリフォーム費用(修繕費となるもの) |



ルール、細かすぎません!?
税理士の私でも、細かいと思います。
細かな部分まで覚える必要はありませんが、「仲介手数料」が資産として計上する必要がある、ということは覚えておきましょう。
物件を手に入れるのに直接的にかかる費用と考えられていますし、発生する確率も高い支出です。
金額も数十万円から数百万円しますので、ここは要注意です。
これに対し、登録免許税・登記費用は一発経費にできます。
資産計上しても良いものですが、経費にする人の方が多いですね。
あと、ちょっと細かいですが、固定資産税(都市計画税も含む)の未経過精算金は資産計上となります。



でも、先生、固定資産税って別に資産を取得するために支払ってるものでもないような気がしますが…。
その通りです。
固定資産税は毎年1月1日に土地・建物などを保有する人にかかる税金です。
別に購入にあたって必要となる経費ではありません。
しかし、税の趣旨としては1月1日の持ち主、つまり売り主側にかけていて、それを年度の途中で売買しようが固定資産税自体が買主にかかるものではありません。
売買の便宜上、固定資産税を売り主、買い主に按分していますが、中身はたんなる土地・建物の本体価格を値上げしているだけ、ということです。
その他、リフォーム費については資産計上と経費・損金の境目がかなり難しいです。
次の記事も参考にしてください。


その他、国税庁のリンクも記載しておきます。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_03_01.htm
国税庁 法人税基本通達7-3-1〜7-3-3の2 固定資産の取得価額(法令解釈通達)。
②自宅(プライベート利用)の場合



もともと自宅として住んでいた家を住み替えで売る場合はどうなるんですか。
自宅などプライベートで使っていた不動産の場合は、事業用のような資産計上・損金の考え方ではなく、「取得費に含めるもの」「取得費に含めないもの」という考え方で判断します。
建物本体実際に支払った金額をもとに計算する「実額取得費」と、売却代金の5%とする「概算取得費」のいずれか大きいほうを選ぶことができます。
実額取得費を計算する際に、何が取得費に含まれるのかをまとめたのが下の表です。
| 取得費に含めるもの | 取得費に含めないもの |
|---|---|
| 購入代金・建築代金(設計料、建築確認申請料を含む) 購入時の仲介手数料 購入時の契約書の印紙税 購入時の登記費用(登録免許税・司法書士報酬など) 土地造成費用 建物の増改築代金 固定資産税・都市計画税の精算金 不動産取得税 使用開始前の期間に対応する借入金利子・保証料など | 使用開始後の期間に対応する借入金利子・保証料など 火災保険料 管理費・修繕積立金 家具・カーテンなど動産の購入代金 引越費用 |
ここでのポイントは、印紙税・不動産取得税・登記費用の扱いです。
自宅などプライベート利用の資産では取得費に含めますが、事業用資産の場合は取得費に含めず、購入した年の必要経費(法人なら損金)にする点が、①でお話しした事業用の場合と正反対になります。
賃貸経営を始めるタイミングで自宅を賃貸に転用する場合などは、この違いを意識しておくとよいでしょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
国税庁タックスアンサー No.3252 取得費となるもの。
2.まとめ
今回は、賃貸建物の取得費について、事業用(個人事業主・法人)と自宅(プライベート利用)の違いを整理しました。
事業用の場合は「資産計上・損金/必要経費算入」という考え方で判断し、印紙税・不動産取得税・登記費用は取得費に含めず経費にできます。
自宅などプライベート利用の場合は「取得費に含める・含めない」という考え方で判断し、同じ印紙税・不動産取得税・登記費用も取得費に含める点が対照的です。



事業用か自宅用かで、同じ費用でも扱いが変わるんですね。
気をつけないと間違えそうです。
そうですね、とくに自宅を賃貸に転用する場合などは、判定を誤りやすいところです。
取得費・取得価額の判定に迷ったときは、購入時の資料を揃えたうえで、早めにご相談くださいね。






