※この記事は令和7年2月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
今回は中小企業が利用できる「中小企業投資促進税(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」について解説します。
なお、他の法人税のブログはこちら。
中小企業投資促進税制の概要

佐々木さん、先日はありがとうございました。
前年はかなり利益が出たので、大型の配送車を購入したのですが…。
まさか、税金を抑える効果があるとは。
今回紹介する「中小企業投資促進税(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」は、法人税と所得税の両方で利用が可能な税制です。
適用条件が少し複雑ですが、強い減税効果を持つので必ず利用すべき税制です。
反面、この制度は「租税特別措置法」に規定されており「当初申告要件」があります。
簡単に言うと、「適用を忘れており、申告期限後に気付いても適用はできない」という、一発勝負の制度です。
税理士側は当然に対象となる資産を購入していないか、関与先の動向を気にすべきです。
関与先もこういった制度があることを知っておいて税理士に「この設備って、何か減税になる制度ありますか?」と問いかけられると身を守れると思います。
すべてを記事にすることはできないので、今回はできるだけシンプルに説明します。
ちなみに、今期からお客様になった会社で、もろに過去の税理士事務所でこの「中小企業投資促進税」の適用が漏れていました(過去5年で4件ほど)。
税理士側の問題か、顧客側の問題かは分かりませんが、過去5年で200万円以上は法人税等が変わる事案でしたので、自分がそのようなミスを犯さないよう自戒の念も込めて記事にいたします。
①減税効果



まずはどんな効果があるのか知りたいです。
その方が頭に入りやすいので。
税金の軽減効果を知っておいた方が、適用条件などが頭に入りやすいですね。
では、効果を説明していきます。
なお、以下の説明は次の資料を基にしています。
国税庁 タックスアンサー No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)
①ー1 特別償却(30%割増償却)
まずは「特別償却」です。
通常、機械設備、車両などの設備は「減価償却資産」となり、各設備の耐用年数(10年など)に合わせて、毎年少しずつ費用化していきます。
(例)1,000万円の製造設備を新品で購入(耐用年数10年、定額法を採用)
減価償却費 1,000万円 / 10年 = 100万円
上記の例ですと、年度の最後に「利益が思ったより出たから、機械設備を新しくするか!」と思って設備を更新しても、購入額1,000万円の1/10しか経費になりません。
むしろ、上記の減価償却費は月割りしますので、年度の最終月で購入した場合には 1,000万円 / 10年 × 1月/12月 = 8.3万円 しか経費となりません。



1,000万円支出して経費になるのが8万円程度ですか…。
ほとんど減税効果ないですね。
定率法という減価償却ですと、もう少し減価償却額が大きくなりますが、それでも16万円。
「利益が出たから投資した」にもかかわらず、減税効果がないのは悲しいですね。
そのような場合に国も投資を促進して経済を活発化するために減税措置を考えています。
それが「特別償却制度」です。
後述する条件にはまる投資の場合には、「通常の減価償却額に加えて、取得価額の30%を追加で償却費として計上」できます。
つまり、上記の例だとこうなります。
(例)1,000万円の製造設備を新品で購入(耐用年数10年、定額法を採用)
(通常)減価償却費 1,000万円 / 10年 × 1/12 = 8.3万円
(特別)減価償却費 1,000万円 × 30% = 300万円
合計 308万円ほど



あら、経費にできる金額が跳ね上がりましたね!
しかも、特別償却の方は月割りじゃないんですね。
年度末に設備投資しても効果ありますね!
通常の減価償却のように月割りの影響も受けませんので、年度末に利益が出て急遽投資をする場合には特に効果的ですね。
①ー2 特別控除(7%税額控除)



こちらは7%と効果が少なそうですが…。
この制度は何でしょう?
この「特別控除(7%税額控除)」は、上述の特別償却と選択適用です。
どちらかの制度を選びます。
ただ、この「特別控除(7%税額控除)」の方が条件が少し厳しくなっています。
※資本金3,000万円以下という条件が追加されます。
タイトルだけ見ると「7%」ですが、税金の軽減効果ですと上記の「特別償却」とタメを張ります。
上記の「特別償却」は経費になりますが、こちらの「特別控除」は算出税額から直接に「取得費の7%」を控除し、さらに控除できなかった分は1年だけ繰越可能です。
さて、この「特別控除」ですが、このような制度です。
- 対象設備の取得費の7%
- 算出税額の20%
※上記のいずれか、少ない額を控除できる。



「いずれか少ない額」ですか…。
ということは、極端な話、法人税が赤字の年度は使えない、ということですか?
この「特別控除(7%税額控除)」は法人税額から控除する制度であるため、赤字の年は使えません。
しかし、そのような場合に備え、「1年繰越可能」です。
つまり、設備の取得年度が赤字 ⇒ 税額控除の利用が不可 であっても、翌年度に持ち越して利用が可能(翌期1年度だけ)ということです。
なお、法人税額から控除する制度である「特別控除7%」は、前述の「特別償却30%」よりも強い効果を発揮します。
しかも、「特別償却30%」が減価償却費の「先取り」であることに対し、「特別控除7%」は法人税等を7%減額したうえで、減価償却費は100%丸ごと利用できます。



つまり、「特別控除7%」の方が圧倒的に有利な税制ということですかね?
税金軽減効果の上で、さらに減価償却費も100%取れるんですから。
理論的には「特別控除7%」の方が圧倒的に有利です。
しかし、実務においては「特別償却30%」の利用の方が圧倒的に多いですね。
これは、後述いたします。
②適用条件



とりあえず、減税効果が高い制度ということが分かりました!
じゃあ、利用するのにどんな条件があるんでしょうか?
②ー1.どんな企業が利用できるのか?
次の企業が対象となります。
- 中小企業者(資本金1億円以下の法人)、農業協同組合、商店街振興組合
※いわゆる、大企業の子会社は対象から外れます。 - 個人事業主(従業員数1,000人以下のみ)



一般的な中小企業はすべて対象になりますね。
また、「税額控除」を利用する場合には、上の条件にプラスして、次の条件も加わります。
会社について、「資本金3,000万円以下」であること。
②ー2.どんな資産が対象になるのか?
まず、次の条件を満たす資産が対象です。
新品(中古はダメ)
※所有権移転リースも含む。
※所有権移転外リースも可能だが、「特別控除」のみが利用可能。
「所有権移転外リース」の意義
国税庁 タックスアンサー No.5704 所有権移転外リース取引
種類 | 取得価額 | その他 |
---|---|---|
機械装置 | 一つ160万円以上 | – |
測定工具・検査工具 | 一つ120万円以上 もしくは 合計額120万円以上(1つ30万円以上のものの合計) | 製品の品質管理の向上等に資するものに限定 |
ソフトウェア | 70万円以上 | 販売用、開発研究用またはサーバー用オペレーティングシステムのうち一定のものなどを除く |
車両運搬具 | 取得価額の制限なし | 次の条件を満たすもの。 普通自動車 貨物運送用 車両総重量が3.5トン以上 |
船舶 | 取得価額の制限なし | 内航海運業用 |
なお、「車両運搬具」「船舶」は取得価額の制限がありませんが、「新品」が対象なうえに「車両総重量が3.5トン以上の貨物運送用」の車輛だと「トレーラー」「ダンプ」「4tトラック」などが対象となります。
つまり、これらの車輛を新品で買えば数百万円は余裕でかかりますね。
取得制限がなくても、ある程度高い金額の資産ということです。



ソフトも対象なんですね。
会計ソフト、原価管理ソフトを買い換える時もいけるかも…。
ソフトウェアはけっこう穴場です。
会計ソフト、原価管理ソフト、ERPなど対象になるケースも多いので、購入の際には契約税理士に確認をしましょう。
②ー3.事業の種類も関係あり?
会社が行っている事業の種類も適用にあたって関係します。
ほとんどの業種で利用が可能ですが、明確に利用できません、と書かれる事業もあります。
【利用できない業種】
娯楽業(映画業除く)、性風俗関連特殊営業
上記以外の業種はほぼすべて対象です。
詳しくは、契約税理士に確認しましょう。
②ー4.その他の注意点
- 当初申告要件あり(つまり、一発勝負です。忘れていましたは通用しません。)
⇒ 事業の用に供した(資産を使い始めた)年度において確実に申告すること。
利用を忘れていた場合、「更正の請求」で適用することはできません。 - 「特別償却(30%)」「特別控除(7%)」の選択適用です。
後で、変更は不可能です。 - リース資産も対象です。
③実務での利用



先生は先ほど「特別償却30%の利用が多い」と言っていましたが、そうなんですか?
あくまで私の体験の範囲ですが、ほとんどの会社が「特別償却」を選んでいました。
私は税務経験が浅いころは「特別控除の方が直接法人税等から引けるし、償却額は同時に計上できるから、特別償却みたいに償却額の先食いにならないし…なんで社長さんは特別償却を選ぶんだろうな???」と思っていました。
今、ある程度の年数を積んで、社長さんと一緒に当期と翌期の経営計画を考えるようになってみると、やはり私が社長でも「特別償却」を選びます。
理由は簡単、次のような思考法です。
「設備投資は当期に利益が出過ぎてキャッシュに余剰があるし、やっておくか!」
「でも、資産計上で経費にならない、うーんどうしよう?」
「税理士に相談したら特別償却って制度がいけるじゃない!?」
「特別控除も選べるみたいだけど、税金の20%が限界でしょ?そのくらいなら、翌期の役員報酬や管理費を調整すればOKだよ」
「とにかく、今期の利益を圧縮して、法人税が減る方が良いな!」
このような思考回路です。
経営をしている私の立場でも、基本的には「特別償却(30%)」を優先します。
「特別控除(7%)」は、見た目の効果(税額から直接引ける、減価償却を先食いしない)は高いです。
しかし、同族会社の場合には翌期の利益はかなりコントロールができます。
その意味では、瞬間的な効果が高い「特別償却(30%)」が選ばれるのも納得と思います。
中小企業投資促進税制のまとめ



なるほど、勉強になりました!
とはいえ、細々として難しいので、何か大きな買い物をするなら佐々木先生に相談しますね!
今回紹介した「中小企業投資促進税制」は、「大きな設備投資、つまり大きな買い物」をした際に効果が出る可能性があるものです。
つまり、大きな買い物(50万円以上とか)をする際は、契約税理士に連絡すればよいです。
その時に税理士の方でも大きな数字が動けば「何か適用できる特別措置はないか?逆に、制限されることはないか?」など、思考を巡らすことができます。
これが、決算月が終わり、申告まであと2週間とか1週間の状態で「大きな買い物をしていた」ということが分かっても、対応ができないこともあります。
大きな数字が動くときは税理士と情報を共有する、ついでに世間話でもしておく、くらいが良い関係かなと思います。
中小企業投資促進税制以外にも特別措置は多いですが、そのような相談をされたい方は気軽にご相談ください。