※この記事は令和6年12月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
忘年会のシーズンですね。
会社でも忘年会、新年会などされると思います。
その際の交際費について、担当企業からご質問をいただいた話をしてみます。
本社(または自宅)で開いた宴会は交際費?
佐々木さん、今度、取引先を読んで本社で軽いパーティーをするんだよ。
居酒屋を使うわけじゃなし、スーパーでお酒とつまみを買ってきて、会議室で催すんだけど、これ接待交際費でいいよね?
この質問を受けたとき、「接待交際は、普通居酒屋やホテルで行うよなぁ」という考えがチラッと頭をよぎりました。
とはいえ、99%接待交際費で大丈夫だろうけど残り1%の不安を埋めて、エビデンスを基に回答したいため、ちょっと調べて回答しました。
社長も「普通は接待って居酒屋だよなぁ…」と思って電話されたのでしょう。
交際費等とは交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます(措置法61の4④、措置法通達61の4(1)-1)。
「交際費」はこのような定義となっています。
ここから導き出せる結論として、
- 得意先、仕入先その他事業に関係のある者
- 接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること
この2点を満たしていることが必要です。
「居酒屋で」など場所についての言及はありません。
つまり、スーパーで買ったお酒とつまみで、本社でやろうが自宅でやろうが関係ないことになります。
参考までに、ものの本を調べてみました。
No180「社屋の上棟、竣工に際し支払う酒肴料」
こちらの事例でも、社屋の上棟式に建設会社や下請先の役員等を呼んで宴会をしているようですが、回答では当然のごとく交際費の判定がされていました。
これで、交際費と確定です。
福利厚生でも会議でもありません(念のため)。
もちろん、プライベートの支出でもありません(さらに念のため)。
1万円以下飲食の規程の適用
あの先生…
このパーティーの場合でも「1万円以下」のルールは使って大丈夫ですよね?
秘書さんが気にかけてくれたルールは「交際費」の中のルールの一つです。
なお、ここからは、資本金が1億円超の会社だけが気にするところです。
交際費の制度は法人税の中でも少し複雑な制限を課されています。
資本金が1億円以下の企業、つまり中小企業であれば各年度で800万円までは全額損金算入できます。したがって、「年度内で800万円も接待交際費を使用しないわい!」という企業であれば、あまり接待交際費の支出額に敏感になる必要はありません。
(資金繰り、経営成績上の問題はあるでしょうが…)
しかし、資本金が1億円超の企業にとっては、接待交際費は基本的に損金不算入です。
ただし、次の場合には損金に計上できるという建付けです。
- 接待交際費のうち一人頭1万円以下の飲食(法人税法61の4、措置法施行令37の5)
- 接待交際費のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%
上記は、損金算入できます。
つまり、1万円以下の飲食は全額損金計上可能、そこを外れても飲食なら50%損金参入可能という2段構えの構成となっています。
あら、わが社は資本金2,000万円なので1万円ルールはあまり気にしなくていいんですね。
そうです。
年度で800万円を超える交際費の支出がない限りは、特に気にしなくてもいいですね。
社長さんの会社には関係ありませんが、参考までに、この1万円以下飲食の規程もみておきましょう(要約)。
「飲食その他これに類する行為のために要する費用であって、その支出する金額を参加した者の数で割った金額が1万円以下」(措置法61の4⑥)
うむ、通常の年は関係ないが、来年度は「設立50周年式典」を行う予定だ。
800万円くらい行くかもしれんなぁ…。
そうであれば、「1万円以下の飲食」については、通常の接待交際費と区分しておくべきですね。
「交際費は年間800万円まで損金算入できる」という制限から「1万円以下の飲食」は除かれます。
つまり、「1万円以下の飲食」は接待交際だけど、法人税法上の交際費の制限はかからないのです。
回答が遅れましたが、パーティーの場合も同様で、パーティー費用を人数割りして、一人あたま1万円以下なら「1万円以下飲食」としてカウント可能です。
まとめ
接待交際費は、けっこう悩む点が多いのだよなぁ。
佐々木さん、また困ったら教えてほしい。
もちろんです。
社長のおっしゃる通り、接待交際費はルールも多いですし、実務的に税理士でも悩む点が多い科目です。
その都度調べてお答えしますので、気軽に聞いてくださいね。
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