※この記事は令和7年1月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
執筆している今は2025年1月、段々と個人の確定申告の時期が近づいてきました。
そこで、今回は「青色申告と白色申告の違い」について書いてみます。
昨年に開業したばかり、または、青色申告の承認申請を出したものの何をしていいか分からない、という方はぜひお読みください。
青色申告と白色申告
おぉ、これは知りたいですね。
私も昨年から事業を開始して、青色申告の紙を出しましたが、具体的に何をするのかよく分かっていません。
大丈夫です。
身も蓋もありませんが、税理士に依頼している場合には、分かっていなくとも処理してくれますし、説明もしてくれます(笑)。
というと、説明にならないので、まずは、大きな違いを一覧で見てみましょう。
青色申告と白色申告の違いの一覧
青色申告 (65万円or55万円控除) | 青色申告 (10万円控除) | 白色申告 | |
---|---|---|---|
事前届出 | 必要。一定の期間までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出する。 | 不要。 | |
日常の経理 | 複式簿記 | 単式簿記 | |
申告書 | 貸借対照表、損益計算書、その他 | 損益計算書、その他 | 収支内訳書 |
特別控除 | 65万円または55万円控除 | 10万円控除 | なし |
不動産所得の場合の要件 | アパートは10室以上 貸家は5棟以上 | なし | なし |
メリット | 特別控除に加えて、様々な恩恵あり | 日々の経理が簡単 | |
デメリット | 複式簿記で行う場合には、多少の専門知識が必要 | 白色よりは丁寧な経理処理が必要 | 特別控除なし。 青色申告のような恩恵もなし。 |
へぇ…けっこういろいろな違いがあるんですねぇ。
けっこういろいろと違いが出ますね。
簡単に見ていきましょうか。
事前届出の有無
まず、青色申告は様々なメリットがある反面、事前に届出が必要です。
逆に言うと、届出を出さないと白色申告として扱われます。
そして、青色申告を受けたい場合には「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。
その期限は、次のようになっています。
- 新規に事業開始した人
1月15日までに開始した ⇒ 3月15日までに届出
1月16日~12月31日の間に開始 ⇒ 開始した日から2月以内 - 既に事業を行っている人
3月15日までに届出
なお、上記の期限までに提出することで青色申告の効果を受けることができるのは、提出した翌年の申告時からです。
つまり、令和7年1月1日から令和7年12月31日の1年分の事業について、令和8年に確定申告する際に青色申告の65万円控除の効果を得たいと思えば、令和7年3月15日までに申請書を提出する必要があるということです。
日常の経理
上の表を見たら、複式簿記で処理しているのは青色申告(65万円or55万円控除)だけなんですね。
白色はもちろん、青色申告の10万円控除でも簡単な経理で大丈夫なんですねぇ。
青色申告=複式簿記と思ってらっしゃる方もいますが、実は青色申告で10万円控除だけで良ければ、複式簿記で処理する必要はありません。
しかも、パソコンで処理するのでなく、紙で作成でもOKです。
自分で申告している方で「青色にすると難しそう…だから白色でいいや」という方もいると思いますが、青色申告の10万円控除は思うよりも簡単です。
「複式簿記」がハードルになっているだけなら、青色申告の10万円控除は検討の余地ありですよ。
申告書
以前に一度青色申告書を見せてもらいましたが、全然何を書いていいか分かりませんでしたよ…。
青色申告(65万円or55万円控除)と青色申告10万円控除、白色申告で見た目が大きく変わるのが申告書です。
とくに、青色申告(65万円or55万円控除)は複式簿記での経理処理を前提にしていて、内容は法人の決算書に近づいています。
実際に、申告書を見てみますか。
まずは青色申告決算書から。
これは…何かいろいろ書いてありますね。
青色申告書の1枚目、損益計算書です。
正直なところ、これだけなら感覚的に書ける個人事業主さんも多いと思います。
青色申告10万円控除なら、これと後数枚資料を書けば終わりです。
うん?
これは何ですかね?
青色申告書の4枚目、貸借対照表です。
これを簿記などの知識がない人が、いきなり作れと言われても、難しいでしょう。
青色申告(65万円or55万円控除)のハードルですね。
実際には、損益計算書と貸借対照表の間に給料賃金や主な取引先、減価償却の内訳を書く欄がありますが、そこらへんは何とか書ける人が多いと思います。
やはり、ハードルは貸借対照表でしょう。
次に白色申告の収支内訳書です。
見た目は青色申告の損益計算書と似ています。
というか、内容もほぼ一緒ですね。
これを正確に埋められる人なら、青色申告10万円控除を取った方が良いと思います。
そこまで手間は変わらないはずです。
ちなみに、今は会計freeeなどの便利な会計ソフトもあり、簿記の知識がほとんどなくとも貸借対照表を作れます。
(正確であるかは置いておいて…)
自分で青色申告(65万円or55万円控除)を取っている人もけっこういます。
とくに、大企業出身でソフト操作に慣れている方、WebデザイナーなどのIT関係の方はPC知識も豊富なので、Etaxと合わせて使いこなしている人もいますね。
特別控除
私が佐々木さんに依頼したのもコレです!
65万円控除とあと、経理でラクしたかったのと。
青色申告される方のほとんどがこの特別控除のためにしているでしょう。
複式簿記で処理して、貸借対照表を作るなどの要件を満たせば、65万円ほど利益から控除できます。
65万円はけっこう大きいですよね。
ちなみに、青色申告(65万円or55万円控除)の65万円控除と55万円控除の差は、簡単に言えば「申告書を電子で送付するかどうか」です。
税理士に依頼すれば、普通の事務所なら電子申告しますので、自動的に65万円控除となるでしょう。
自分でやるなら、「Etax」または「会計ソフトの機能で電子申告」のどちらかでしょうね。
なお、昔ながらのお客様で、紙のノートに収入経費をまとめ、そこから自分で紙の申告書にすべて記載して作成し55万円控除を取っている方もいます。
平成30年に法改正されるまでは、この紙の方法でも65万円控除できたのですが、時代ですねぇ。
その他、不動産所得についてはこの記事では割愛させてもらいます。
小ネタ
青色申告の「青」って何?と聞かれたことがあります。
私も長年、何の意味だろう?申告書が青いわけでもないしなぁ、と疑問でした。
税理士に登録すると、登録初年度にいろいろな研修を受けるのですが、その一つでとある大学教授が教えてくれました。
青色申告の青について、シャウプ勧告を作ったシャウプ博士が発案者とのこと。
博士は日本に申告制度を定着させるため、色で申告を表したいと考えたそうです。
とある晴れた日にタクシーの運転手さんに「日本人は青い空を見てどう思いますか?」と尋ねたら「きれいで透き通った印象ですね」と答えてくれたとのこと。
「そうだ!青空のような透き通ったクリアな色、青色申告にすれば印象が良くて日本に定着するぞ!」
と思って青色申告になったそうです。
シャウプ勧告は1949年、もう70年以上も「青色申告」は続き、日本に定着しているんですね。
青色申告の特別控除以外のメリット
説明ありがとうございます。
あと、表の「特別控除に加えて、様々な恩恵あり」はどういうメリットがあるんでしょう?
いろいろありますので、役立ちそうなものから数個書いていきますね。
青色専従者給与(家族への給与)が使える
これがけっこう大きなメリットです。
白色の方も専従者給与という制度はありますが、制限が強く、金額に上限(年間86万円)があります。
青色申告されている方は、もう少し柔軟に家族に対して給与を出すことが可能です。
とはいえ、いろいろ条件もありますし、税務調査で否認されやすい論点でもあります。
また、青色専従者給与で別に記事を書く予定です。
家事関連費を使いやすい
個人事業主ですと、自宅を事務所として使っている、車を自家用と事業用に共用している、などプライベートと事業が混ざる場合があります。
その場合に、白色申告の場合には「主たる部分が業務の遂行上必要であり」という書かれ方がされており、おおむね「50%超」は事業に使っている必要があります。
しかし、青色申告の場合には、「取引の記録等に基づいて、業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額」という書かれ方がされており、記録さえしっかりしていれば事業割合が10%でも経費計上可能です。
上記のいずれも所得税法施行令第九十六条(必要経費とされない家事関連費)より
※分かりやすいように一部省略しています。
30万円未満の資産を一括で経費にできる
これもけっこう役に立ちます。
白色申告の場合には、単体で10万円以上の物品は資産計上して減価償却の必要があります。
これ、経費にするのが遅れるとかよりも、個人事業主さんの場合には「減価償却制度自体がよく分からない」という点で減価償却はできるだけやりたくないでしょう。
10万円以上なんて、今の時代、パソコン、携帯など簡単に超えてきます。
これに対し、青色申告の場合には、30万円未満のものは一括で経費にできます。
年合計300円万までという制限と、あと、決算書に少し内容を書いたりと面倒はありますが、減価償却するよりは簡単です。
その他の恩恵
上記の他にも「赤字を3年間繰り越せる」「賃上げ税制などの特別措置の適用が可能」などの恩恵があります。
事業が拡大してくると使える恩恵もありますので、青色申告は経理処理が面倒であること以外はメリットだらけです。
青色申告を税理士に依頼したらいくらかかる?
さて、一番聞きたいところですが…
青色申告を依頼したらいくらくらいなんですか?
そうですよね。
当事務所のHPにも、目安の料金を掲載しています。
記帳代行の丸投げ(レシートなどを当事務所に一任)の形で、年間約20万円程度は必要です。
年間20万円は高いのか、安いのか、よく分かりませんね。
一般的な税理士事務所の価格帯とは思いますが、お客様には次のように説明しています。
「青色申告で65万円控除できれば、だいたい税金で年間20万円はトクしますよ」と。
次のような考え方です。
(白色から青色65万円控除になった場合)
- 65万円控除により、
65万円 × 25% = 16万円 ほど減税効果。 - 当事務所に支払う20万円も経費になる。
20万円 × 30% = 6万円 ほど減税効果。
上記の①、②を合計して約22万円ほど減税効果です。
なお、①の25%は所得税15%、住民税10%を想定しています。
また、②の30%は所得税15%、住民税10%、事業税5%を想定しています。
社会保険料の削減効果もあるので、実際にはもう少し効果あるかもですね。
20万円を佐々木さんの事務所に支払っても、それ以上の減税効果が出るってことですね!
しかも、自分でやる経理処理が大幅に減りますしね!
個人事業主で儲かってくると、「お金より時間」が大切になります。
時間の確保と経理の安全のために税理士に任せちゃうのは良い選択と思います。
ついでに、資金繰りや法人設立など相談できる税理士だとなおいいですね。
さて、青色申告、資金繰りなど幅広く相談したい方は、気軽にお問合せください。
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