※この記事は令和7年7月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
今回は、法人の白色申告について考えてみます。
税理士契約をしている法人であれば、当然に「青色申告」でしょうし、何なら「法人に青色、白色の申告ってあるんだ?」くらいの感覚だと思います。
個人事業主の「青色」「白色」については記事を書いてきましたが、そういえば法人の「青色」「白色」についてはあまり私自身意識していなかったなぁ、と思って記事にします。


法人の青色申告、白色申告の違いは?

佐々木さんに言われて気づきましたが…
法人にも青色、白色の区分ってあるんですね!?
はい、実は法人にも「青色申告」「白色申告」の違いがあるんです。
とはいっても、「白色申告」の法人はほとんど見たことありません。
私の体験の中でもごく少数です。
白色申告のパターンで見たことがあるのは、次の3種類です。
- 法人設立したけど、そのまま何もしなかったので自動的に白色申告になっていた
- 自分で法人の申告をされていた方で、青色の制度を知らなかった
- 税務調査のペナルティにより青色を取り消された
①青色申告と白色申告の条件



そもそも、佐々木さんに税務申告お願いして、気付いたら青色申告でしたが、何か佐々木さんの方でしているんですか!?
まず、法人は何もしないと白色申告です。
なので、法人が白色申告するためには、設立後に特に何もしていなければ勝手にそうなります。
次に法人の青色申告ですが、「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。





うーん、見たことあるような、ないような…。
佐々木先生、こんなの作ってましたっけ?
法人の経営者やスタッフさんが見た記憶がなくてもしょうがないです。
法人の設立後には「設立届(税務署、県、市町村)」「給与支払事務所開設届」「インボイス(適格請求書発行事業者の登録申請)」「社会保険関係の届出」など出すものが多いです。
その中に紛れて覚えていないのもムリないですね。
なお、「青色申告承認申請書」は、設立から3月以内に出さないと、適用が翌年からになってしまいます。
なので、法人を設立し、業務で忙しく税理士を依頼するのが遅れた会社の場合には初年度は白色になるパターンがありますね。
②法人の青色申告のメリット



うーん、白色にするメリットって何かあるんですか??
というか、青色の場合って何がメリットなんでしたっけ?
先に青色申告のメリットを何個か書きますね。
- 赤字の10年間の繰越が可能
- 前年黒字、当年赤字の場合に欠損金の繰戻還付という税金を還付させる制度が使える
- 30万円未満の設備を一度に経費にできる
- 設備投資、賃上げ、試験研究などに対して一定の税額控除、特別償却が可能
- 税務調査において税務署側が更正する際に理由の付記が必要
- 税務署側が推計による更正、決定ができない
はっきりと書くと、「法人においては青色がスタンダード」です。
白色申告をしている法人は、税理士からみれば「何かある法人なのかな??」とちょっと身構えてしまいます。
なお、法人設立について個人事業主さんに聞かれますが、法人の場合は個人のように「65万円の特別控除」はありません。
それでも、99%以上の法人(活動中で税理士がいるもの)が青色申告を選びます。
そのぐらい、法人では青色が普通ということですね。
③法人の白色申告のメリット



うーん、じゃあ、法人の白色申告はまったくメリットなし!?
法人の白色申告のメリット…実は私もあまり考えたことがありません。
実は、最近「法人設立したけど忙しくて何もしてなく、結果として1期目が白色申告」のパターンに出会いました。
そこで、白色申告のメリット、頑張って列記してみます。
- 単式簿記(家計簿)で良い
- 税理士なしの自己申告もしやすい(元帳がいらない)
- 気がラク
本当に強引に列挙してみました。
まず、白色の最大の特徴は家計簿レベルの記帳でOKという点です。
当然に総勘定元帳も不要。
ということは、税理士を依頼しなくても、自分で帳簿を付けることができますね。
あとは、難解な法人税申告書を強引に自力で記載すれば…税理士の手を借りずに申告できます。
そして、青色申告でない白色申告、そして家計簿レベルの記帳処理でいいのなら、なんか気がラク?税務署でも何でもこい!みたいな気持ちになる…かなぁ。



佐々木先生、テキトーに書いてません?
いやぁ、なかなか白色申告のメリットって書きづらいですよ。
「税理士費用がもったいなく、どうしても自分で申告したい、けど複式簿記や元帳なんて分からない」という場合に白色申告の出番なんでしょうが…
正直なところ、そのような経営者に出会ったら「会社でなく個人事業」を勧めます。
法人の白色申告は、記帳が家計簿レベルで良いとはいえ、法人税申告書は青色も白色も大して違いはありません。
別表5あたりは、はっきり言って意味不明だと思います。
そのような法人税申告書と格闘して辛い時間を過ごすくらいなら、個人事業主で白色申告すれば「収支内訳書」を書いて「確定申告書」を数枚書けばいいだけ。
はるかに簡単です。
なお、法人の白色申告だと「税務調査を受けやすい」「いや、ほとんど税務調査が来ない」など都市伝説のようなものがありますが、あまり関係ないと思います。
国税の方もKSKというシステムで一括管理していますが、「年商規模」「役員報酬の規模」など様々な要素を同業種内で比べたりして候補を出しているので、白色かどうかを気にしているようには見えません。
④私の体験



佐々木さんの白色申告の体験はどんなものがあるんですか?
税務調査で違反して青色申告を取り消された法人…は置いておいて。
過去に自分で法人税申告書を作成して提出している経営者さんに出会ったことはあります。
(ハル税理士事務所でなく、過去の経験です)
自分で作っているとはいえ、年商は億越え、従業員も数人いて…しかも経営者に簿記などの知識はなく、税務署の手引きだけ見て作成して(当然に手書きです、税務ソフトなんて使っていません)提出していました。
キャンパスノートに毎日の出納を書き、レシートは封筒に保管…すごいです。
なお、税理士の私でも税務ソフトなしで白紙の法人税の別表に手書きしてください、と言われたら……けっこうキツイです。
しかも、紙で作るなら書き間違いのたびに二重線で消して…めちゃくちゃ汚い状態になりそう。
その経営者さん、税理士さんの費用がもったないわけでなく、身近に税理士さんの知り合いがおらず、最初自分で法人税申告をしたら、そのままそれが習慣になったと言っていました。
「いやー、3,4年に一度税務署さんが来て、あれが違うこれが違うで100万円以上持っていかれて、毎回ケンカしてたよ!」
と笑っていましたが、このくらい豪快な人でないと法人の自己申告はできないですね。



何でその豪快な経営者さんは税理士を頼もうと思ったんですかね?
年齢が行って、法人税申告書の細かい文字が見えなくなってきたらしいです。
税理士の知り合いができたから(私でないです)、頼んでみたらラクで、もう自分でやる気はなくなったとのこと。
あと、青色申告の利点(赤字繰越、30万円未満の設備の一発償却など)を知ったら、「早くやっておけば良かったなぁ」とのことでした。
法人の白色申告のまとめ



結局、法人の白色申告のメリットって、あまりなさそうですね(笑)
うーん、法人設立した人はたいてい税理士を依頼します。
依頼された税理士は、普通は青色申告にしますので青色申告のメリットを受けられる状況がスタンダードとも言えますね。
教訓としては、法人を設立したらすぐに「青色申告承認申請書」は出した方が良いです。
もしくは税理士に早めに依頼することです。
白色申告のメリットは、実際にはほとんどないので、青色申告をお勧めしますよ。
法人設立された方で「何すればよいか分からない…」という場合は気軽にご相談ください。