※この記事は令和7年1月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
前回に引き続き、「相続、贈与」の基礎を解説していきます。
なお、前回はコチラ。
相続税の申告義務と税率
前回に引き続き、相続のことを教えてくれたまえ。
非課税枠についても教えてほしい。
承知いたしました。
相続税には申告義務について書きますが、そもそも相続対象の財産が非課税枠内で相続税が発生しない場合には申告義務がありません。
※相続対象の財産が非課税枠を超えているが、特例を利用して相続税が発生しないケースでは、申告が必要となります(配偶者の1億6000万円控除など)。
そこで、まずは相続税の非課税枠である「基礎控除額」について知りましょう。
①基礎控除額
相続税の基礎控除は少し聞いたことがあります。
相続人1人につき1,000万円ですよね。
惜しいです!
相続税の基礎控除額は平成27年1月1日で変わっており、たしかにそれ以前は相続人1人につき1,000万円でした。
5,000万円+(1,000万円 × 法定相続人の数)
それが、平成27年1月1日以降は次のように変わりました。
3,000万円+(600万円 × 法定相続人の数)
かなり変わっていますね。
数千万円単位で控除額が減っていませんか!?
かなり変わっています。
私が税理士勉強を始めた平成20年は相続税は本当に「富裕層のみが関係のある税金」でした。
しかし、令和7年1月現在、少し土地・建物と預金を持っているだけで相続税がかかるようになっています。
とはいえ、まだ全人口の10%程度が相続税の納付義務がある、と言われています。
逆に言うと、今でも全人口の90%程度は相続税は関係がありません。
さて、相続税の基礎控除の話に戻ります。
まず、相続税はすべての相続人が申告しなければいけないわけではありません。
原則として、相続財産が「基礎控除額」を超え、相続税が発生する場合に申告義務を負います。
※前述のとおり、相続対象の財産が非課税枠を超えているが、特例を利用して相続税が発生しないケースでは、申告が必要となります!
では、基礎控除額について、上でも書きましたが、再度掲載します。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円×法定相続人の数)
例:被相続人(父A)
相続人:Aの長男、次男、三男のケース
※ 父Aの妻は既に亡くなっているケース
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 3人)= 4,800万円
つまり、上記のケースでは相続財産が4,800万円以内であれば相続税は発生しないし、相続税の申告義務もありません。
なお、妻が生きているケースでは、相続人は4人となるため、基礎控除額は3,000万円 + (600万円 × 4人)= 5,400万円 となる。
基礎控除額は相続の基礎というべき部分です。
この他、「養子縁組」の相続人がいる場合にはまた異なる計算方法が採用されますが、そういったレアケースについては個別に相続に詳しい税理士に相談されるべきでしょう。
(ブログを読んで実行するような内容ではありません)
②申告不要のケース
なるほど…。
基礎控除額以下なら相続税が発生しないんですね。
もっと相続の申告をしなくていいケースについて具体的に知りたいのですが…。
では、実際に申告不要となるケースを見ていきましょう。
相続する財産が基礎控除額以下
相続税において、基礎控除額は最低でも3,000万円+(600万円×法定相続人の数)の分だけあります。
つまり、被相続人の相続財産を確認した際に、「明らかに3,000万円+(600万円×法定相続人の数)に達しない」場合には申告不要となります。
この場合には、相続人の確定の作業は銀行預金の名義変更などの点で必要となりますが、相続税の申告作業は不要です。
法定相続情報一覧図(被相続人の相続人の一覧をまとめたもの、法務局に必要書類を提出して作成)、または被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本により、預金の引継ぎが可能です。
相続税の申告がないだけで、かなり労力が減ります。
※後述しますが、「被相続人の相続財産の価値の正確な算定」は専門家でないと難しいです。
そのため、基礎控除額ギリギリ(基礎控除額マイナス10%程度)の場合には専門家(税理士)への相談は必須です。
申告要件のない各種控除を適用し、相続税額が0円の場合
基礎控除額を計算し、相続財産と比較した場合に、相続財産が基礎控除額を超えた場合にも申告不要となる場合があります。
相続税の計算には各種の控除がありますが、そのうち申告が要件となっていないものを当てはめ、その結果として相続税額が0円となれば申告不要です。
申告が要件となっていない控除には次のようなものがあります。
- 障害者控除:相続人が85歳未満の障害者のときに、相続税の額から一定の金額を差し引くもの。
- 未成年者控除:相続人が未成年者のときに、相続税の額から一定の金額を差し引くもの。
- 相次相続控除:今回の相続開始前10年以内に被相続人が相続等により財産を取得し相続税が課されていた場合には、相続人の相続税額から、一定の金額を控除するもの。
相続人が10年以内に2回目の相続を経験する際に適用できる可能性がある。 - 外国税額控除:外国で支払った相続税に相当する税金を、一定額まで日本の相続税から控除できる制度。
これらを適用した結果、相続税額が0円となれば申告不要です。
一つ一つの控除制度は機会があればまた記事にしたいと思います。
基礎控除額を超える相続財産を有し、上記の控除を適用しても相続税額が0円とならない場合には、申告が必要です。
③相続税の税率
以前に少し聞いたことがあるが、相続税も所得税みたいに多ければ多いほど税率が高くなるのだよね?
そうです。
所得税と同じく、課税遺産が多いほど税率が高くなる「超過累進課税」という制度が採用されています。
税率は次のとおりです。
基礎控除額を超えた取得分 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
すごいですね…。
6億円を超えると55%、遺産の半分以上が税金で持っていかれるんですね…。
そうですね、遺産が多い資産家の方にとっては大打撃でしょう。
とはいえ、ストレートに「資産が6億円超えているから税率55%」というわけでもありません。
基礎控除額、非課税資産の存在に加え、相続税の税率が相続人各個人にかかるという性質があるため、実際の計算では予想よりも少ない税率になる場合もあります。
この点、次回に詳しく記事にする予定です。
まとめ
今回も勉強になりました!
基礎控除額、税率…。
相続税の世界も奥が深いですね!
相続税と贈与税を合わせて資産税なんて言い方をしますが、かなり深い世界です。
私も税理士ですが、すべての資産税の世界を知っているわけではありませんし、常に勉強していないと法改正に置いていかれます。
相続は一人一人状況が違いますので、注意して状況をお聞きしないと間違う可能性も多々あります。
やっぱり、常に勉強です。
さて、相続、贈与について相談したい方は気軽にお問い合わせください。
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