※この記事は令和7年5月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
今回は「あぁ、今年も忙しくて確定申告しなかったなぁ」「確定申告って何をすればよいか分からないまま期限が過ぎちゃった…」という方の無申告の対応とペナルティのお話です。
なお、過去の所得税のブログはこちらから。
所得税の無申告の対応とペナルティ

佐々木さん!
私の仲間で、個人事業をしているけれど、確定申告していない人がいます。
先日、確定申告をしていないことについて相談を受けたんですけど、何かいい方法ありますかね?
無申告の対応としては、「すぐに申告・納税の対応をする」しかないです。
個人事業を始めれば、通常は次の過程を辿ります。
- 会社員を辞める
- 開業届や青色申告承認申請書などを提出する
- 個人事業として営業して結果を出す
- 頑張った翌年の2月~3月15日に確定申告をして納税する
しかし、この「通常のパターン」にはまらない人がいます。
つまり、「個人事業で稼いでいる」けれども「開業の届出もなければ申告・納税もしていない」という状況です。
本来あるべき姿と離れており、税務リスクだらけの状態です。
なら、なぜこのような状態になり、その状態を容認してしまうのか…?
1.なぜ、申告・納税をしないのか?



申告や納税しないって…
それって、「無申告」で「脱税」ですよね!!
はっきり言ってしまうと「重い税負担で破産しかねない」状態です。
また、どんなに言いつくろっても「脱税」的な状態であることは確実です。
しかし、そう言い切って切り捨てるのは税理士としての使命に反する気がします。
では、なぜ「ちゃんとしたいけれど…」確定申告をせずに脱税に近い状態になってしまうのか?
当事務所の経験では、次のパターンが多いです。
- 「何をしたらよいか」分からない
- 忙しすぎて、気が付いたら今年も確定申告時期を逃してしまう
- 申告未納の「脱税」状態を甘く見ている
- 他の個人事業主仲間も申告していないが10年とか調査がなく大丈夫であるから
いずれの理由も「ちゃんとした人」から見れば「言い訳に過ぎない」でしょう。
しかし、当の本人は「ちゃんとしたいし、納税も必要ならする」というケースが多いです。
そこで、さらに理由を深堀してみます。
①「何をしたらよいか」分からない



「何をしたらよいか」分からないって、佐々木さんのような税理士さんを頼めばいいんじゃないですか?
結論としては、「自分で調べて、記帳して申告する(無料税務相談会を含む)」か「税理士に依頼する」の2択となります。
でも、個人事業主で忙しい方の場合や税務知識に疎い方の場合は「自分で調べて、記帳して申告する(無料税務相談会を含む)」はとてもできないでしょう。



じゃあ、税理士さんに依頼すればいいじゃないですか!?
これが、「税理士に依頼する」という方法を取らない理由は個人事業主さんだけの責任とは思えないんですよね…。
個人で稼いでいる人にとっては、「税理士」のハードルはけっこう高いんですよ…。
理由は次のとおりです。
- 税理士の知り合いなどいない
- 税理士事務所の前まで来たけど、何か怖い雰囲気で扉を叩けなくて帰る
- 「無申告」であることを伝えれば、「税理士」に怒られる
- 「税理士」って「値段が高いんでしょう?」
けっこう、このような理由で「税理士」に依頼することを躊躇するパターン多いです。



あぁ、なんとなく分かる気もしますね。
佐々木先生に頼む以前の税理士事務所が、たしかに「荘厳な」オーラを出していて、税理士さんとはほとんど話したことないですし。
そうですね。
「税理士」は国家資格であり、それなりに社会的に重要な資格ではあると思います。
ただ、依頼する「お客さん」にとって「荘厳であること」「格式が高いこと」が良いかは別ですね。
また、「報酬をもらって仕事をする以上、お客さんを叱ることは基本的には少ない」です。
(納税意識に乏しい、経営者としてのモラルに欠ける、という場合には当事務所ははっきりと注意します)
あくまで「申告は必要だし、そう思ったからこそ税理士に相談する」という姿勢であれば、税理士が叱ることはないと思います。
むしろ、一番よくあるパターンは「税理士の知り合いがいない」というところですね。



たしかに、税理士の知り合いっていないですね。
でも、経営者つながりで他の経営者に聞けばいい気がしますけどね。
その通りです。
仲間の経営者がお勧めする税理士であれば一番とっつきやすいです。
結論、「確定申告で何をしたら良いか分からない」という人は仲間の経営者に税理士を紹介してもらってください。
そして、税理士の報酬が高いかどうかは、その人の受け取り方にもよります。
参考までに当事務所の概算の価格表は次のリンクにあります。
これを「高いなぁ」と感じるか、「安心を得るための必要経費」と捉えるか、さらに一歩進んで「報酬を払うなら、節税方法とかいろいろ聞こう!」と積極的に捉えるか……経営者の器しだいですね。
②忙しすぎて、気が付いたら今年も確定申告時期を逃してしまう
「忙しすぎて、気が付いたら今年も確定申告時期を逃してしまう」という人は、「今日、明日の仕事に精一杯の状態で1か月先のことも見えていない状態」の可能性が高いです。
つまり、そもそも資金管理や将来的な経営指標、到達地点が見えていません、断言します。
ですので、少しでも暇な時期に「税理士」を紹介してもらって、「人生の資金相談」に乗ってもらってください。
忙しいということは、それなりに収入があるということです。
収入があるうちに、身の回りはきれいにしましょう。
そして、将来に向けて「お金回りのことを相談できる」人と知り合いましょう。
税理士でなくとも、FPやコンサルタントでもいいかもしれません。
ただ、税務申告は義務である以上、税理士が「相談相手になる」ことが一番手っ取り早いです。
「確定申告していない」「納税していない」は、事業をしているうえでリスクでしかありません
電話一本、早めに税理士に相談しましょう。
③申告未納の「脱税」状態を甘く見ている
④他の個人事業主仲間も申告していないが10年とか調査がなく大丈夫であるから



これは、私も以前はけっこう思っていましたね。
佐々木さんにいろいろ教えてもらってからは、納税するのが当たりまえの感覚になりましたが。
後述しますが、無申告のペナルティはけっこう厳しいです。
「加算税」「延滞税」で、本来払うべき税額の2倍以上払う場面もありますし、「住民税」や「社会保険料」が後から追って課されてくると、本業に支障をきたす場面も多いです。
そして、中には「いざとなれば自己破産します」と言う方もいますが、「税金は自己破産では清算されません」。
そう言うと「金融機関から借りて税金を払ってから自己破産します」という方もいますが、金融機関の借入には「過去2年の確定申告書」が必要です。
つまり、借り入れもできないということです。
無申告の状態は「金融機関」や「補助金申請」などいろんな場面でマイナスに働きます。
厳しい元請、取引先さんだと、申告書の提出を求められる場合もあります。
この他にも税務調査の反面により、取引先を失うリスクなど挙げればきりがありません。
「税務申告は運転免許と一緒で、して当たりまえ」という感覚になりましょう。
時々受ける質問で、「なんで確定申告しなきゃいけないんですか?仲間の個人事業主は、10年間無申告で、調査もされていませんよ!」なんてものがあります。
その時には、次のように返しています。
当事務所「運転免許は持っていますか?」
個人事業主さん「そりゃあ、持っていますよ。」
当事務所「なんで運転免許持っているんですかね?」
個人事業主さん「そりゃ、運転免許なしに車を運転できないでしょ。」
当事務所「それでは、運転免許なしに運転している個人事業主さんがいたら、どう思います?取引とかしますか?」
個人事業主さん「まぁ、ストレートに言えば、やばい人だと思いますね。正直、そんな人とは関わりたくないですよ、常識なさ過ぎて。」
当事務所「確定申告と納税も、運転免許の例と一緒ですよ。」
個人事業主さん「???」
当事務所「運転免許なしに運転していても、10年20年と警察に止められずに運転できる可能性が高いですよ。でも、そんな人とは関わりたくないですよね?
税務申告と納税も一緒です。そんなこともできない人と関わりたくない、と思う人が多いんですよ。
特に、大きな企業になればなるほど、法令順守が求められますから、下請けさんも変な人がいると困るんです。結局、運転免許と同じで、確定申告や納税をしていないということは「関わりたくない人」と思われる可能性が高いですし、ある程度大きな企業からは相手にされないこともあるんですよ。」
確定申告と納税の意味合いが、金銭的なリスクだけでなく、人間同士のリスクも持っていることを少しでも感じてもらえれば幸いです。
2.無申告のペナルティ



あまり気にしたことないですが、無申告ですとどのようなペナルティがあるんですか?
せっかくなので、無申告(所得税)のペナルティについて簡単に見てみましょう。
①延滞税
延滞税は、本来の納期限(個人の確定申告であれば、翌年3月15日)の翌日から発生します。
以外に複雑な仕組みのペナルティなので詳述は避けます。
覚えておきたいことは、次のことです。
- 仮装隠蔽、つまり重加算税の対象とならなければ、発生から1年で止まる
- 重加算税の対象となってしまうと、本税を納付するまでかかり続ける
- 納期限の翌日から2か月までは税率が低く済む
つまり、「自ら期限後申告、修正申告をするなら安く済む可能性が高い」「早ければ早いほど安く済む可能性が高い」ということです。
参考:国税庁 タックスアンサー No.9205 延滞税について
②加算税
加算税にもいろいろ種類があり、税率が異なります。
個人事業主が無申告の状態の場合には、無申告加算税として、最低でも5%の税率が課されます。
「最低でも5%」の状態は、「税務署から指摘、調査がある前に」「自ら申告」した場合です。
税務署から「電話」があり、「税務調査」があった場合には、もっと大きい税率になっていきます。
つまり、「税務署に何か言われる前に自ら申告すること」が一番傷が浅くて済むということです。
参考:国税庁 タックスアンサー No.2024 確定申告を忘れたとき
③住民税、社会保険にも影響がある
詳細は避けますが、無申告の方が申告をすることにより、住民税や社会保険料(国保)も増額されます。
そして、住民税や社会保険料(国保)にもペナルティはあるので、本来期限通りに申告していた状態よりも大きい額を課されることになるでしょう。
3.実例



佐々木さんは、やはり無申告の人の対応とかすることあるんですか?
税理士という職業柄、無申告の方の相談を受ける場合もあります。
もちろん、回答としては「早めに申告・納税をしましょう」ということにつきます。
しかし、無申告の方の場合には、それだけで済まない状態が多いです。



??どういうことですか?
申告すればいいんじゃないですか?
申告は、資料を集めて申告書を作成すればできるのですが、「納税資金がない」というケースが多いんです。



今まで申告・納税しないで生きてきたなら、税金の分だけ多くお金が貯まっているはずですよ!?
理論上は、納税していないなら、その分だけ多くお金が貯まるはずです。
しかし、申し訳ないですが、無申告の方というのは大半の場合、「申告や納税のことは考えずにお金を使う」状態の方が大半です。
むしろ、そこでしっかりとお金を貯めるような方は、しっかりと申告・納税しています。
ですので、無申告の方の申告相談を受ける場合の注意点は「納税資金があるかどうか」に尽きます。
実際、数年間無申告の状態の個人事業主さんで、期限後申告した場合のシミュレーションをしたことがありますが、納税額は500万円ほど(延滞税、加算税、住民税など含む)になりました。
しかし、その方の資金的には300万円程度は大丈夫だけど、500万円は厳しい。
では、納税の猶予(分割納付)を依頼するか?、家族に借りて何とかするか?……けっこう悩んだケースがあります。
結局、分割納付を税務署に依頼しつつ、自己資金と家族からの借入金でしのぎ、その間に生活を立て直してもらいました。
上記の500万円というのは、大げさではなく、自分で申告しているので、かなり少なく落ち着いた計算です。
これが、税務調査に入られていれば、あと数百万円は増えているうえに、反面調査にでも行かれれば取引先も失い、どうしようもない事例でした。
つまり、無申告の状態というのは、金銭面でリスクがあるのはもちろん、取引先も失って仕事ができなくなる可能性もある状態なのです。
せっかく築いた仕事の信頼をすべて失うこともありますので、この記事を読んで「不安だ…」と感じる方であれば、すぐに税理士さんに相談してください。
まとめ



なるほど…。
あまり気にしたことはありませんが、無申告の状態って、こんなに危険なのですね…。
たいていの方は、確定申告して納税するので、あまり関係ない話だと思います。
しかし、中にはそうでない方もいます。
今は申告・納税していなくても問題ないかもしれませんが、いつ税務調査に入られて、「お金」「取引先からの信頼」を失うことになるか分かりません。
確定申告を甘く考えずに、税理士に相談して欲しいなぁ、と思います。
確定申告・納税の相談は気軽にご連絡ください。