※この記事は令和7年6月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
前回に引き続き、ebayでの経理処理のポイントについて解説です。
ebayでの処理が終わって、資金がPayoneerに移送、その後で日本の銀行に移るまでの手数料と為替差損益の考え方です。
なお、関連記事はコチラ。


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資金の流れとPayoneer、為替差損益

そもそもですが、ebayからPayoneer、そして銀行への流れについて、あらためて知りたいですね。
資金の流れと手数料を知るのは、経理だけでなくてebay事業にも役立ちます。
ドルで行っていて、さらに手数料を引かれていくので、自分でも「果たしてどのくらい儲かっているのか」が良く分からないことがあるからです。





へぇ…
ebayからお金が移動した後は、「payoneer」で手数料、その後で為替差損益が出て、自分の銀行口座に行くんですね。
ebay事業で手数料が主にかかってくるのはアイテム売却時ですね。
つまり、ebayの中。
その後、売上金がpayoneerに移送される際には手数料はかからず、payoneerから日本の銀行口座に移送される際に2%の為替手数料が差し引かれます。
また、その時点でドルから円に通貨が変わり、売れた時の円ドルレートと日本円に切り替えた時の円ドルレートとの差額が「為替差損益」となります。
①例を用いて、payoneer手数料と為替差損益を算出してみる
実際の数字がないときついでしょうから、まずは例を。
例:
6月1日
300ドルのアイテムが売れた、ebay手数料は15%の45ドルほど引かれた。
6月の平均円ドルレート(TTB)は、150円だった。
よって、売上45,000円、支払手数料6,750円で差引38,250円となった。
6月5日
ebayからpayoneerへ255ドル(300ドルー45ドル)が移送され、同日に日本の銀行へ送金した。
その際に手数料5.1ドル(255ドル×2%)が引かれ、249.9ドルが送金対象額となった。
この日の円ドルレートは155円だったため、38,735円が口座に入金された。



???
6月5日の処理はどうすればいいんですかね?
6月5日の155円でpayoneer手数料を処理する?
payoneer手数料は6月の平均円ドルレート(TTB)150円で処理すればOK。
つまり、payoneer手数料は765円(5.1ドル×150円)となります。
でもそれよりも大切なことは、
日本の自分の銀行口座に38,735円が入金された。
この1点が非常に大切です。
売上からebay手数料を引き、payoneer手数料を引き、最後に為替差損益を調整しますが、必ず最後は「日本の自分の銀行口座に入金された38,735円」に合わせることで損益のミスの可能性が激減します。
この例だと、計算式はこうなります。
売上 45,000円 ー ebay手数料6,875円 ー payoneer手数料765円 ± X = 38,735円



Xが出てきた!
中学校の数学!
Xがあると堅苦しいですが、この場合のXは為替差損益と呼ばれ、円ドルレートの差額です。
でも、単なる調整項目のようでもあります。
とにかく、日本の口座に入金された38,735円が大切で、最後にそこに合わせていくための項目です。
この場合は、Xは1,375円のプラスになります。
②payoneerレポートは必要?



payoneer手数料を知るには、payoneerのレポートを出して、集計とかするんですかね?
payoneer手数料については、レポートを出力して計算するのが正確ですが、そうしなくとも計算できます。
ebayからの出金をすぐにpayoneerから日本の銀行へ引き出している(という仮定)であれば、payoneerのレポートがなくともpayoneer手数料の計算は可能です。





あっ、前回使ったebayのFinancialStatementだ!
このebayのFinancialStatementのPayouts(青のライン)に2%を掛けて、月平均為替レート(上の例だと150円)を掛ければ、その月のpayoneer手数料が分かります。
ただし、期末だけは要注意です。
まだpayoneerから日本の銀行に出金していないのに、上の計算をすると「手数料の先取り」が生じてしまい、税法違反状態となります。
なので、期末だけはpayoneerレポートを見て計算する必要ありますね。
それか、強引に日本の銀行への入金額に合わせるか、ですね。
上の図で言うと、Payoutsが3121.03ドルです。
仮にこの月の円ドルレートが150円として、3121.03ドルすべてをpayoneerから引き出したと仮定します。
すると、 3121.03ドル×2%×150円=9,363円 がpayoneer手数料ですね。
しかし、実際には、payoneerで数日滞留期間があり、出金が翌年になってしまった分が321.03ドルあった。
結果、2800ドル分を日本の銀行に移送し、その金額は425,600円でした。
こうなれば、売上 ー ebay手数料 - payoneer手数料(9,363円) ± X = 425,600円
とする強引なやり方もあります。
とにかく、X(為替差損益)に吸収させるやり方ですね。
会計的には間違っていると言われるかもしれませんが、税務的な損益は当たっているのでさほど問題にはならないと思います。
なお、当事務所はPayoneerレポートを使って計算していくので、上記のような状態は起こりませんが、自分でラクに計算していくなら上のやり方はありでしょう。
③結局、為替差損益って何者なのよ?



今までの文章を読んで、なんとなく分かったような、分からないような…。
payoneer手数料はebay出金額の2%を取ればいいんでしょうけど、結局、為替差損益とやらが何者か分かりません。
レポートもないし、得たいが知れない…。
計算式で「X」と表示した為替差損益ですが、実態が薄いものです。
どうしても、ドルと円で会計処理をしていくと差額が出ますが、それを「為替差損益」と名前を付けて呼んでいるだけ、と言ってもいいかも。
正直なところ、実際の為替差損益を正確に追うのはムリです。
1日の中でも為替レートは常に変化していて、1秒ごとに変化しています。
それを追いかけて差額を出すのは手計算の素人には不可能に近く、日本円での入金額から逆算するのが精一杯です。



そんな、為替差損益って、簿記でもよく聞くし、計算するし。
曖昧なことでいいものなんですか?
たしかに、為替差損益を正確に計算し、証拠を持って示すことは難しいです。
でも、商売をしている限り、結局は自分の日本の銀行口座に入ってきた金額が「利益」なのだと捉えて問題ないと考えています。
ebayでリストする際に自分で値付けした金額から、ebay手数料、payoneer手数料を引かれ、最後に自分の口座に入ってきますが、この金額が事業主が自由にできる金額であることに間違いはありません。
極端な話、売上(ebayでリストした金額)から、自分の国内銀行への入金額との差額を一律に「手数料」としても、税務的には間違いないでしょう(税務調査で問題視はされるでしょうが、数字が違っているとは言われないでしょう)。
なので、とにかく「自分の国内銀行への入金額」をゴールとして計算すれば、間違いは起きにくいのがebay事業です。
むしろ、あまり細かく「為替差損益とは…」など考えない方がいいですね。
専門家でも分かりませんから。
まとめ



ebayの経理のツボというか、見方とというか…。
普段馴染みのないドルと円の輸出事業だけに、頭が疲れましたし、結局分かってないかも…。
こればかりは、自分でebayをしてみて、それで「自分の売上と手数料は実際にはどんなもんだろう?」という疑問をいだき、作業してみないと実感しません。
ebayって不思議なもので、バカスカ売れると気分が上がりますが、本当にそれで「いくら儲かっているか?」「次の仕入れまでの資金は持つのか?」「外注さんを雇うなら、どの程度まで許容できるのか?」など、消費税も絡んで実感が少ない事業です。
というか、絡んでくる変数(円ドルの影響、仕入値の変化、パックする際の送料の変化、消費税額計算の影響など)が多くて、実際の利益を読みづらいのが現実です。
この点、深く財務数字を考える人の方が悩みますし、正解が出づらいです。
もう、このアイテム売れればたぶん3,000円くらいの利益だわ!、と適当に考えた方がいいような事業です。
しかし、確実に自分の銀行残高に影響を与えていきますので、これを後追いでも把握していくことはすごく重要です。
ただ、会計処理に関しては、「考え過ぎず、ポイントを押さえたら後は省力化が望ましい」ですね。
ここを頑張っても1円にもなりませんから。
ebay事業の会計部分で疑問がある方は気軽にご相談ください。