※この記事は令和7年2月現在の法令に基づいて作成しています。
こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
今回は相続財産のうち、非課税となる財産について解説します。
非課税となる財産は数種類ありますが、そのうち最も有名なのがこの「生命保険金(死亡保険金)」でしょう。
将来のために、知っておいてソンはないトピックです。
なお、過去の相続の記事はコチラ。
相続における非課税の財産

おぉ、佐々木さん。
将来のことを考えて生命保険を掛けておこうと思うのだが、たしか以前に生命保険金は非課税とか言っていたような…。
もう一度教えてもらえるだろうか?
相続において、被相続人の保有する資産がすべて相続税の課税対象となるわけではありません。
政策的な観点、相続人の感情などの点で税を課さないものもあります。
主な非課税相続財産は7つあります。
次のようなものですね。
- 墓地・墓石・仏壇など祭祀関係
- 公益事業を目的としている財産
- 条例による給付金受給の権利等
- 生命保険金のうち「500万円×法定相続人数」
- 死亡退職金のうち「500万円×法定相続人数」
- 個人経営の幼稚園事業で使っていた財産
- 公益事業を目的する特定の法人に寄付した財産等
このうち、「墓地・墓石・仏壇など祭祀関係」は頻出のものですが、ある意味当然のことで意識する人は少ないと思います。
上記のうち経営者が意識するのは「生命保険金」と「死亡退職金」あたりでしょう。
(業種によっては「公益事業用財産」「幼稚園事業用財産」などの知識も必要かもしれません)
今回は、「生命保険金」の非課税枠について記載します。
生命保険金の非課税
生命保険金について、簡単に言えば「500万円×法定相続人数」が非課税の相続財産となります。
相続人が3人(妻、子ども2人)であれば、500万円×3人=1,500万円までが非課税ですね。



けっこうシンプルですね。
あまり悩むとこなさそうな…。
基本的にはシンプルです。
注意するべきポイントは、自分が非課税の生命保険金と思っているものが、本当に相続税法上の非課税の保険金かどうか、というスタートの部分です。
保険金はけっこう複雑な金融商品です。
保険金の負担者がだれであったかによって、「相続税」「所得税」「贈与税」と税目が変わる性質を持っています。
重要な部分ですので、そこから記載していきます。
①基礎用語
まず、保険金の基礎について説明します。
相続税だけでなく、所得税や贈与税とも関わっているためより複雑に感じます。
最初に、用語及びその意味を理解しましょう。
契約者(保険料負担者):保険契約の契約者であり、保険料を負担している者。
被保険者:保険の対象者であり、その人が「死亡、病気、ケガ」を負った場合に保険契約が効果を生じる。
受取人:保険金を受け取る者。
これらの用語は保険金を理解する上で必須です。
知らないと、保険の話をしていても「今、だれの話(保険の契約している人の話なのか、保険金を受け取る人の話なのか)をしているのか」が分からなくなります。
保険料負担者、受取人による関係性
次に「保険料負担者」「被保険者」「受取人」、これらの関係性により保険金を受け取った者の税金関係が「相続税」「所得税」「贈与税」と変化します。
まず、理解しやすくするため、登場人物で考えます。
会社経営者のA、その配偶者(妻)のB、そしてA・Bと血縁関係のないAの親友C(他人)を想定する。
そして、Aが死亡した場合のケースでどう税目(相続税、所得税、贈与税など税金の種類のこと)が変わるかをみます。
契約状況 | 保険料負担者 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|---|
Aが保険料を負担 | A | A | B | 相続税 |
Bが保険料を負担し、Bが受取 | B | A | B | 所得税 |
Bが保険料を負担し、Cが受取 | B | A | C | 贈与税 |
上の表を見ると一目瞭然ですが、「被保険者」はすべてA(経営者で夫)です。
Aが死亡した場合に保険金が発生するので、被保険者がAであることは税目に影響はありません。
したがって、保険金がどの税目の影響を受けるかは「保険料負担者(=だれが保険金を負担していたか)」と「受取人(=保険金を受け取る者)」の関係性により決まります。
次に各パターンを解説します。
A(死亡した者)が保険料を支払い、B(妻)が受け取った



一番オーソドックスなパターンですね!
自分で契約して保険料を支払い、家族のために保険金を残す。
最初に思いつくパターンです。
たしかに、一番オーソドックスなパターンですね。
この場合は、当然に相続税の対象となります。
Aは保険料負担者であり、被保険者であり、かつ、それを被相続人の妻としています。
Aが積み上げた財産である保険金が、Aの死亡により相続人であるBに支払わるため、相続税の対象となります。
※Aの相続人である妻、子(相続税法で非課税枠として認められる養子を含む)が保険金を受け取る場合には、同様の効果になります。
そして、このケースについて、Bが保険金を受け取ることになります。
ここで注意すべきは、保険金は受取人固有の財産ということです。
つまり、遺産分割協議の対象とはなりません(死亡保険金が「みなし相続財産」と呼ばれる所以です)。
Bの固有財産として他の相続人と相談をしなくとも、Bの財産となります。
なお、法定相続人×500万円までが非課税枠ですので、それを超える場合には相続税が課されるため注意が必要です。
B(妻)が保険料を支払い、Bが受け取った
この場合には、所得税の対象となります。
Bが積み上げた財産である保険金が、Aの死亡のために支払われており、それを法定相続人である妻Bが受け取っています。
Bが積み上げた資産をBが受け取っている以上、Bの所得とされ、所得税の対象となります。
(死亡したAが積み上げた資産でないので、相続財産とはならない)
なお、この場合の所得税の所得類型(所得税の計算上の所得の行き先)は「一時所得」となり、次の計算式により所得が計算されます。
【一時所得の場合の計算】
(受け取った保険金 ー 既に払い込んだ保険料)× 1/2
※他に一時所得がない場合です。
Bが保険料を支払い、C(親友)が受け取った
あまりないバターンでしょうが、恩のある親友を保険金の受取人に指定している、会社を一緒に創立して苦労をかけた友人を受取人に指定している、などの場合が想定できる状況です。
要は、血縁のないCが受取人である場合に、贈与税の対象となるケースです。
Bが積み上げた財産である保険金がAの死亡をきっかけとして、他人のCに移っています。
そのため、これは贈与税の対象となります。
贈与税には年間110万円の非課税枠がありますが、それを超えれば税金が発生します。
死亡保険金のまとめ



なるほど…。
脂肪保険金自体は簡単そうですが、保険金の種類がそもそも「生命保険金」として相続税の非課税の対象となっているかどうかが重要ということですね!
そのとおりです。
生命保険金については、「500万円×法定相続人の人数」という点はシンプルですが、いかんせん保険には種類が多いという点が注意ポイントです。
相続対策として生命保険金を使う場合には、生命保険金は一律に相続税の対象となるわけではないこと、そして、生命保険金を会社の社長が検討したときに「その目的と金額、効果」をしっかり把握することが大切です。
まぁ、一番簡単なのは、保険営業の人に「これは相続税の非課税枠の対象になる生命保険ですか?」と尋ねて、しっかり文書(説明用のドキュメント)をもらうのが確実です。
一般的な保険会社であれば、保険についての説明に税務上の取扱いも記載されますので、それをしっかりと説明できる保険営業さんと付き合うことが大切ですね。
社長が愛する妻や子供に遺産を非課税枠を利用して残したいのであれば、確実に相続税の対象となるように案内をすべきですし、また、その非課税枠(相続人の数 × 500万円)を説明すべきなのは保険の代理人さんとしては当然のことです。
相続対策でなく、会社の代表者として、会社の経営上で万が一があった場合に耐えられるように、という意味であれば法人が支払い、法人が受け取ればよいだけです(法人保険)。
死亡保険金もしっかり学ぼうとすれば相当に深い世界です。
税理士として、この手の相続分野の勉強は欠かすことはできません。
相続対策の保険制度について聞きたい場合は気軽にどうぞ。