こんにちは、新潟市で活動しているハル税理士事務所、税理士の佐々木です。
令和7年3月のとある日、税務無料相談会に税理士として参加してきました。
せっかくなので、その様子を記載してみます。
なお、上の写真は税務無料相談会の会場となった「朱鷺メッセ」です。
税務無料相談の様子
そもそも税務無料相談って?

佐々木先生、税務無料相談って何ですか?
タダでいろいろ相談に乗ってくれるんですか?
税務無料相談はその名の通り「無料」で「税務に関する相談」ができる機会です。
開催主体によって、無料対応できる範囲も違いますが、基本的には地元の税理士さんが対応しています。
例えば新潟市では、次のような機関が開催していますね。
- 税理士会
- 商工会議所
- 新潟市役所
- 各税理士法人、事務所
開催主体によって、参加できる範囲や相談内容も違います。
税理士会、市役所:「だれでも」「無料」、その代わり「浅い内容、かつ、個人の方限定」。
商工会議所:「商工会議所に入会者」について「無料」で「少し深い内容もOK」。
各税理士法人、事務所:ある意味ハウスメーカーの無料見学会と一緒です。「無料」ですが「勧誘はある」と思った方がいいですね(その税理士法人、事務所の方針しだいですが)。



佐々木先生の事務所は、無料相談を開催しているんですか?
「無料相談会」みたいな大々的なものはしていませんが、問い合わせが来ましたら、初回面談は無料でしています。
社長さんや個人事業主さんに呼ばれていろいろ出歩いているので、「無料の移動相談会」的な面もあるかも(笑)。
もちろん、お金が発生する内容であれば、事前にその旨を伝えて、納得されればその先に進めるようにしています。
朱鷺メッセ会場での税務無料相談会



今回朱鷺メッセでの税務無料相談は、どこが主催しているのですか?
朱鷺メッセでの税務無料相談は、「税理士会」が税務署から委託を受けて行っています。
新潟市民が対象で、相談内容は「個人の所得税の申告」です。
ですので、時期も所得税の確定申告時期(2月16日~3月15日)に合わせて、平日はほぼ毎日行われていますね。
税理士の私はその中の1日が割り当てられ、朱鷺メッセに赴いて、そこで相談を受ける役を果たします。
せっかくなので、税理士目線で朱鷺メッセでの税務無料相談について、書いてみます。
1.担当の日にちの決定
まず、私は3月10日に割り当てられました。
割り当ては税理士会の方で行うので、私の方はそれに従うまでです。
税理士会の連絡メールで来るので、メールなどちゃんと見ていないと気付かないかも。
例年、税務無料相談会を無断欠席する税理士さんがいるそうですが、故意にやる場合もあれば、単純に自分の割当日を知らないだけ(メールに気付いていない)の可能性もあります。
当日も、税理士さんが一人少なかったので、お休みしたのかな?
まぁ、理由はどうあれ、社会人として無断欠席は良くないですけどね…。
2.当日の相談会の開始前
相談会は9時開始です。
遅刻しないように、だいたい8時30分くらいに会場につきました。
会場は、3月10日という所得税の申告期限間際のせいか、かなり人が多かったです。
開場待ちの人が200人くらいいたでしょうか。
その波をすり抜けて、相談担当税理士の待合室に向かいます。
待合室は6畳程度の一室、実際にはほぼ会場にいるので、待合室は狭くても問題ありません。
インスタント味噌汁、インスタントコーヒーなどもらえますので、貧乏性の私にはありがたいです(笑)。
そして、税務署の職員さんから簡単に当日の対応のレクがあります(5分くらい)が、細かな説明はありません。
とりあえず、「来た人の状況を聞き、その場でできる限りの回答をするのみ」という姿勢で会場に行き、席に座ります。
3.税務無料相談の件数と種類



税務無料相談って、どんな相談が多いんですか?
個人事業主さんが多いんですかね?
せっかくなので、3月10日の9時~16時で受けた相談内容を件数別にまとめてみました。
内容 | 件数 |
---|---|
所得税の会計処理 | 6件 |
消費税関係(インボイス対応) | 3件 ※所得税の会計処理と重複します |
住宅ローン控除関係 | 2件 |
不動産所得の相談 | 3件 |
合計 | 14件 |



全部で14件の相談ですかね?
実際には、「消費税関係(インボイス対応)」の相談をされる方は個人事業主で、そのまま「所得税の会計処理」の相談もされますので、重複しています。
受けた人数で言うと11人ですかね。
昼休憩が1時間あるので、9時から16時の間(昼休憩を除いて稼働時間6時間)に受けた人数としては11人。
一人あたり35分程度の相談時間ですね。



一人あたり35分ですか…。
多いのか、短いのか分からないですね。
私も、多いか短いかは判断不能ですね…。
でも、その日に初対面で出会った方の事業内容を聞き、事業の1年の動きを見せてもらい、必要な部分をチェック、もしくは修正、そして、家族関係や社保の状態を聞いて決算書から確定申告書まで仕上げるには少ない時間ですね。



佐々木さんが、普段、我々のような個人事業主さんの申告を受ける際はもっと時間を掛けますものね。
私が普段、契約している個人事業主さんの申告を請け負う際は、1年がかりですね。
もちろん、毎日会うわけではないですが、1,2か月に一度、領収書や売り上げなどの会計処理をすると同時に簡単な近況ヒアリング、会計処理から分かる税金の予測、それに応じた節税手段のアドバイスなどしています。
4.当日のあたふた、大変だったケース
この税務無料相談会ですが、普段事務所で受ける相談や仕事と違って、けっこう焦ることが多いです。
- 資料が手元にない
- パソコンで検索できない
- 税務ソフトが使えない
- 時間が掛けられない
普段、事務所でゆっくりと資料を見たり、国税庁ホームページで通達を調べたりしているのと違い、税務無料相談会の会場では身一つです。
一応、スマホで簡単に検索はかけたりしますが、基本的には培った知識と経験で、その場で答えを出していきます。
そして、相手はその場で出会った初めての人、必要な状況もスマートに聞いていかないといけません。
これがかなり疲れます。
脳の瞬発力を使うのか、けっこう時間の流れが早く感じます。
そして、相談される方も当然に税務知識が少ないので、それを分かりやすく説明する技能も必要です。



ちなみに、当日一番大変だったのはどんなケースですか?
圧倒的に時間がかかり、大変だったケースが1件ありました。
内容としては、単なる不動産所得で貸家を1軒持っているだけなので、本来は簡単な内容なのですが…。
相談者の方が「耳が聞こえない方(年齢でなく障害によって聞こえない、考えなどはしっかりされた方)」でした。
とにかく、筆談でポイントを聞き、筆談で不動産所得の考え(給与と違うよ)を伝え、過去数年間申告していない方(ただし、還付申告になる方)だったので、申告した方がお金が戻るよ、などを書いて書いて書きまくって伝えました。
1時間以上やり取りしましたが、結局は資料が足りず、もう一度帰って資料整える、というところで終わりました。
還付申告なので、時間制限は5年あることを伝えると安心しているようでした(とはいえ、一番古い年度の時間制限は近いので、少し早めにとも伝えました)。
紙で3枚くらいいろいろ書いたので、けっこう大変でした。
5.税務無料相談で思うこと



税務無料相談会、お疲れさまでした。
無料なら私も相談したいな…。
佐々木先生は思うこととかあるんですか?
まず、一番に思うことは、税務無料相談ですと節税も何もない、ということですね…。
とにかく、その場で「適正に税務申告できるように形を整える」だけで精一杯です。
中には、もう少し早めに相談してもらえれば、「消費税のインボイス特例と原則課税での有利不利判定ができた…」「青色事業専従者で奥さんに給料を払えた…」「不動産で白色だけど、青色申告にして他の所得控除も取れた(医療費など)」という場面が多かったです。
前述したとおり、私が普段、契約している個人事業主さんにはけっこう厚めにサポートしています。
消費税のインボイス特例(2割納付)や、簡易課税の説明・有利不利判定は当たりまえで、「会社設立の効果」、「小規模企業共済、セーフティ共済の効果」、「人を雇うにあたって気を付けること、コスト」など幅広くお伝えしています。
そのすべてが「税務無料相談会」では発揮できず、その場で「とにかく申告できるように処理すること」に注力してしまいますね。
(「無料」なのでしょうがないですが…)
少なくとも、ある程度利益を得ている個人事業主さんであれば、一度真剣に税理士さんと「税金と節税、経営方法」について話した方がいいな、と思いました。
お金はかかっても、経験になる、タメになることがあると思います。
(聞いたけど、タメになることなかった、という場合には税理士側の説明責任が果たされてないケースもあります…)
6.税務無料相談会に合う人



逆に、税務無料相談会に合う人、それで充分な人はいますかね?
たしかに、「税務無料相談会」で充分、というか無料相談会を活用して欲しい人もいます。
主に次に人です。
- 個人事業主で暮らしが成り立つ程度の収入が厳しい方
- 不動産所得の申告の方で、少ない所得の方
- 住宅ローン控除の申告の方
上記の方は、無料相談を利用すべきでしょう。
「個人事業主」の方で「暮らしが成り立つ程度の収入が厳しい方」は、正直なところ税理士を雇う余裕がないでしょう。
節税手段は、ほどんど「儲かっている方」に向けたものがほとんどです。
「会社員もしくは引退された方で、不動産所得が少しある」については、不動産所得が少し(年間30,40万円程度)なら、税金はほとんど発生しないでしょうから、無料相談で充分と思います。
「一度限りの申告(住宅ローン控除)」については、住宅ローン控除で申告が必要なのは初年度だけなので、無料相談を大いに活用すべきでしょう。
7.税務無料相談会の注意点
使い方によっては便利な税務無料相談会ですが、行く前に注意があります。
- 資料を揃えて行くこと
- 会場ではけっこう待つ可能性が高いこと
- 複雑な内容(固定資産の譲渡、相続・贈与のトータルの相談、節税に関することなど)は受け付けてもらえないこと
上の点は気を付けてください。
特に、資料が揃っていないと、また自宅に帰る必要があります。
(当日の11人のうち、3人が資料不足で帰られました)
住宅ローン控除なんかは、必要資料が受けたい控除の種類別なうえにけっこう多いので、事前にハウスメーカーさんに要確認ですね。
まとめ



一日お疲れさまでした。
一日でかなり肩が凝りました。
普段と違う脳を使うと、やはり疲れますね…。
しかし、税理士にとって税務無料相談会は社会責任の一つでもあります。
また、普段と違う事例にあたることもあり、勉強にもなります。
会計ソフトの発展でクレカ自動連係で仕訳処理可能、また、ネット検索記事も年々情報が増えていますので、自分で確定申告される方も多くなっています。
けど、「税務無料相談会」の様子を見ていると、やはり税の専門家としてできることはまだまだ多いなぁ、と感じます。
また、来年も朱鷺メッセで1日頑張ることになると思いますが、また、丁寧・確実に対応しようと思います。
税務に関するご相談は気軽にどうぞ。